2月21、22日に開催されたイベント「CNET Japan Live 2017 ビジネスに必須となるA.Iの可能性」では、企業における先進的な人工知能(AI)の活用事例や、今後のビジネスでAIが必要不可欠になるかを解説したりする多くの講演があった。
データ活用の先駆的な企業として、実際にAIを活用したプロジェクトを多数手掛けてきたブレインパッドが「AIによる顧客プロファイリングとマーケティングへの活用」と題して講演。多彩なデータ活用・マーケティングソリューションを提供している同社ならではの、マーケティングにおけるAIの活用方法を紹介するだけでなく、その一例として自然言語解析「LUIS」の具体的な使い方やメリットについても解説した。
登壇したのはブレインパッド ソリューション本部 プロダクトサービス部 部長の熊谷誠一氏。同社が数年来取引している企業の事例を基に、その取り組みを紹介した。
熊谷氏は「日本の人口減少のなかで、いつまで企業は会員を確保していられるのか」と疑問を呈する。その代わりに、いわゆるインバウンドなど、今後明らかに増えることが予想されている“非会員”層に対してマーケティング施策を打つべきだとし、そこにAIを活用することを紹介した。
非会員に対してさまざまな手法でデータを収集することで、その非会員は「認知会員」になる、と熊谷氏。例えばWi-Fiスポットを設置した店舗などに非会員が訪れ、スマートフォンから一度でもWi-Fi接続すれば、そこで(個人の特定はできなくても)その非会員に関するわずかなデータを収集でき、それ以降の来店時に認識できる。
例えば、これまで人が直接目で見て把握するしかなかった「会員ではないが、よく物を買う30代くらいの男性」というような情報をデータ化でき、マーケティング的なアプローチも可能になる、というわけだ。
このようなマーケティング活動に相性の良い技術として示したのが、Microsoft AzureのCognitive Servicesで提供している「Face API」「Emotion API」「LUIS」の3つだ。
Face APIは、画像内の人の顔から年齢と性別を判定できるというもの。飲食店でこの技術を応用すれば、年齢に応じて大人なら通常のメニュー、子供ならキッズメニュー、女性ならレディースセットを自動で提示するような仕組みも開発可能だ。その例として、同社が現在進めているプロジェクトとして紹介したのが「セルフレジ」の実験だ。
来店客が自分自身で商品の会計を行うセルフレジと、それに付随するカメラ内蔵のロボット、Face APIを組み合わせることで、会計時に来店客の年齢チェックなどを自動で行うことができ、顧客データとして蓄積できる仕組み。従来の有人レジでは店員が客の顔を見て年齢を判断、入力しているが、セルフレジでも同様の年齢チェックが自動で行えるというわけだ。
そのほかに、ロボットが空いているセルフレジに客を積極的に誘導し、通常は(顧客情報の入った)会員カードがないと利用できないセルフレジでも、臨時の(顧客情報が不明な)カードで誰でも会計できるようにし、その場合でも非会員の顧客情報の収集につなげることも狙っている。
また、顔写真からその人の気持ちを自動で推定する「Emotion API」は、店舗を訪れた客が店内でなんらかの体験をした後に、満足して退店したかどうか、といった判別に使用できる。実際に同社は、Emotion APIを映画館のセキュリティシステムのカメラと組み合わせ、映画の内容に満足した客が何人いたのかを計測する、という実験も手掛けている。
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