MWC 2017

NianticのハンケCEO、ゲーム体験を変えた「Ingress」「Pokemon GO」を語る

 2016年夏にローンチしたあるゲームが世界中で社会現象になった――「Pokemon GO」だ。単なるモバイルゲームではない。「外に出てソーシャルに」というアイデアは、ゲームそのものの考え方を変えた。

 開発したNianticの設立者で最高経営責任者(CEO)のJohn Hanke氏が、3月2日までスペイン・バルセロナで開催されたイベント「Mobile World Congress 2017」で登壇し、Pokemon GOの開発コンセプトや今後の計画について話した。

John Hanke氏
Nianticの設立者で最高経営責任者(CEO)のJohn Hanke氏

 2015年にHanke氏が立ち上げたNianticは、同氏が勤務していたGoogleのスタートアップとしてスタートした。Hanke氏は「Google Earth」の土台となる技術を提供するKeyholeを創業、GoogleにKeyholeが買収された後は「Google Maps」やストリートビューなどを手がけた。

 従来のモバイルゲームについてHanke氏は、自身が子の親である立場から、次のような懸念があったと明かす。「ビデオゲーム、エンターテインメントなどの体験は魅力的で、子どもは良い天気なのに部屋にこもってマインクラフトをしていた」(Hanke氏)。そこで、外に出るモチベーションが上がるゲームを作ろうと思い至ったという。ガイドラインは(1)新しい場所を見つけるような発見の要素、(2)体を動かしてヘルシーに、(3)屋外でソーシャルに、の3つだ。

 いくつかの実験の後に「どうなるかと思いながらまずはローンチした」のが、位置情報ゲームの「Ingress」だったが、結果は「予想外の成功」だったという。

「ingress」
「ingress」

 「驚いた。ゲーム愛好家にアピールするかなと思っていたら、実際は年齢も性別も多様。ゲーム好きだけではなかった」。予想外だったのは人気だけではない。ベビーカーを押して利用する人、ヘリコプターをチャーターしてゲームのロケーションをキャプチャする人も出てきた。「(Ingressのマークを)タトゥーにする人まで出てきた。ベータ版だったが、もうデザインの変更はできないとデザイナーは嘆いていた」と笑う。

 このようにIngressは世界中に広まり、「ソーシャルなトライブ(部族の意味)」を生んだ。200カ国に広まり、ダウンロード数は2000万に達した。2016年の東京でのIngressのイベントは過去最大の2万人が結集した。「Ingressユーザーが歩いた総距離は3億4400万キロ。これは地球から火星に相当する距離だ」とHanke氏は胸を張る。

 Pokemon GOは、これらのIngressでの学びから生まれたゲームだ。そして、社会現象といってもいいほど大ヒットした。Hanke氏は「フォーキャストは私が最も苦手とすること」と苦笑いしながら、アプリストアで公開された直後のトラフィックの推移を見せた。Pokemon GOはGoogle Cloudでホスティングされているが、写真のようにNianticがローンチ時にターゲットとしていたレベル、予想最悪(最高)のレベルをはるかに上回るトラフィックが押し寄せた。

Niantic
オレンジの線がNianticがローンチ時に想定していたトラフィック、赤が最悪のケース、緑が実際のトラフィック

 Pokemon GOは6億5000万台のデバイスにダウンロードされており、やりとりされたデータは4万4600Tバイトに。Pokemon GOユーザーは累計で87億キロメートルを歩いたというが、これは地球から一番遠い惑星とされる冥王星までの距離を上回るのだそう。捕獲されたポケモンの数は880億匹におよぶ。

 「外に出てアクティブに遊ぶというゲームのバリューが受け入れられた」とHanke氏。図書館がポケストップとなることで子どもに来てもらい、ついでに本を読んでもらうといったエピソードがたくさん生まれたという。

「Pokemon GO」
「Pokemon GO」

 ビジネス面では、スポンサード・ロケーションを導入し成功した。たとえばスターバックスは、全米1万3000カ所のショップをスポンサード・ロケーションとし、特製のPokemon GOフラペチーノも販売した。「小売業にとってはユーザーを呼ぶことができる”聖杯”だ」とHanke氏。現在3万5000カ所のスポンサード・ロケーションがライブで、累計の訪問数は5億に達しているという。

 Hanke氏は、Pokemon GOの現状について話した後、将来の計画も明かした。技術面では、MWCの来場者である通信事業者や無線技術企業に対して、「ビーコンなどの高度な技術に取り組んでおり、(モバイル業界と)コラボレーションを追求する。ブランドには大きなチャンスがある」(Hanke氏)と語る。ウェアラブルも注目しており、2016年12月にApple Watch向けのPokemon GOをローンチしたことや、独自端末「Pokemon GO Plus」などに触れた。

 さらに、2017年の最初のメジャーアップデートとして、2月21日に80匹のポケモンを追加した。今年は3回のメジャーリリースを行う予定で、「今後もヘルシーな成長を遂げる」と述べた。Ingressも、2017年中に新しいバージョンをローンチする予定だ。さらには、新しいARゲームも開発中だという。

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