速度を別にすれば、5Gの最大の利点は低レイテンシ、つまり端末がネットワークにpingを送信してから応答を得るまでの遅延時間が短いということである。必ずしも顕著ではないが、4G LTEでは遅延が発生する。5Gネットワークでは遅延がほぼなくなるため、将来、例えば外科医と患者が同じ部屋にいる必要がなくなるかもしれない。
Ericssonは新興企業のNeuroDigital Technologies、キングスカレッジロンドンの医師たちと共同で研究を行っており、ダミーの患者を使った遠隔手術のデモを披露した。具体的には、外科医がVRヘッドセットと特殊な手袋を使って、別の場所で実際に執刀するロボットアームを操作するというものだ。
手袋には触覚フィードバックモーターが搭載されており、ダミー患者の臓器に触れると振動が発生する。そのため、装着者は実際に患者に触れているような感覚を得られる。
企業はこのアイデアを「スキルのインターネット」と呼んでいる。ロボット工学と触覚フィードバックを利用することで、専門的な技能を遠く離れた場所からリアルタイムで伝えることを可能にする。
リアルタイムの5G接続がなければ、こうした仕組みそのものを構築できないだろう。
外科手術のフィードバックは、触覚を5Gネットワークとうまく組み合わせた一例に過ぎない。触覚フィードバックを利用すれば、体験した触感を送信して、視覚や聴覚による映像体験をさらに充実させることができるようになるだろう。
Ericssonの別のデモでは、フィラグランビアの会場から50km離れた場所にある自動車の運転席に座るという体験が提供された。座席に組み込まれたフィードバックシステムのおかげで、ユーザーは自分が減速帯の上を走行したり、コーンに衝突したりするのを体感できる。筆者はただならぬ速度でそれらのことを体験した。
Sprintの最高技術責任者(CTO)を務めるJohn Saw氏は2月27日のインタビューで、「何マイルも離れた場所にあるものに触れて、それを感じるためには、低レイテンシが必要だ」と述べている。この技術は、ロボットによる組み立て作業を人間に監督させる、といった産業分野での用途も考えられるだろう。
EricssonのCTOを務めるUlf Ewaldson氏は3月1日のインタビューで、ネットワークが人間の思考回路より高速になるのは5Gが初めてだ、と語っている。
現在、GoogleやUberなどの企業が自動運転車に投資しているが、業界関係者の多くは完全自動運転車について、5Gネットワークなしには実現不可能と考えている。
応答速度に優れた5Gネットワークとそのネットワークへのユビキタスなアクセスが実現すれば、自動車は5Gを使って、ほかの自動車や、街灯からガソリンスタンドまで都市の至る所に設置されたセンサと通信できるようになる。
Verizonのネットワークプランニング担当バイスプレジデントのAdam Koeppe氏は2月27日のインタビューで、「自動車だけが重要なのではない。都市設計とテクノロジも重要だ」と答えている。
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