謎だらけの訴訟劇--グーグル対Uber「自動運転車訴訟」 - (page 2)

尽きない疑問

 疑問点としてまず思い浮かぶのは、なぜLevandowskiが直接Uberに移籍する選択肢を選ばなかったのかという点。

 「シリコンバレーの場合は、従業員に競合他社への加入を禁じる契約がほとんど効力を持たない。そのせいで人材の流動化が促され、地域全体の繁栄につながった」「それに対し、かつてDECなど複数のコンピュータ・メーカーが誕生していたマサチューセッツでは、競合禁止契約が厳格に適用されたことなども災いして、1990年代以降ハイテク業界が衰退してしまった」。2月半ばに公開されていたVox記事にはそんな話が出ているが、この点を手掛かりに推測すると、Levandowskiは直接Uberに移籍してもよかったように思える。

 次の疑問は、なぜLevandowskiがわざわざ自分たちの会社を立ち上げたのかという点。本人たちがOtto立ち上げ時に説明していたように、単純に「自分たちの開発してきた技術を早く世の中に出したい」と考えていたのかもしれない(そのために、比較的早期に実現できそうな長距離トラック向けの外付けキットを販売するというビジネスモデルまで用意して)。

 あるいは、ベンチャーを立ち上げて評価額をつけさせたほうが、得られる利益が大きいと考えていたのかもしれない(当初からどこかに早めに売却することを想定していたとして)。この点を推測する手掛かりはいまのところ見つからない。

 3つめの疑問は、OttoにGoogleの機密情報があることをUberがどの時点で知ったのか、それとも今回提訴されるまで知らずにいたのか、といった点。

 Googel在籍中だったLevandowskiが、2016年1月にUberの幹部と話をし、その翌日に自分の会社を登記した、といったあたりからは、両者の間でなんらかの合意が成立していたとの可能性が思い浮かぶ。ただし、この会談の内容が「独立にあたっての支援の依頼もしくは出資の打診」といったものだったのか、それとも持ち出した機密情報の存在を前提として「UberにOttoの買収を持ちかけた」のかでは、やはり大きな違いがある。

 後者の場合には、LevandowskiがGoogleの機密情報をUberに売り渡そうとした、そしてOttoの設立は「ほとぼりを冷ますための措置」という見方も考えられるのではないか。

 4つめの疑問は、Ottoがネバダ州でのデモ走行を同州運輸当局の反対を押し切って実施していた点に関するもの。Uberが昨年12月に、サンフランシスコでのサービス実験に関してカリフォルニア州当局ともめていたのは記憶に新しい(自動運転車の公道走行に必要な許可を取らずにサービス実験を始めたことが原因でおこったもめごと)。

 あの件では、責任者であるLevandowskiが屁理屈を言いつづけて、小さなベンチャーでさえ取得している許可を取る気がまったくなさそうだったのが不思議だったが、あの場合と同様にLevandowskiはOttoのトラックデモ走行についても、単に初めからライセンスなど取るつもりがなかったのか、それともUberに価値を示す、値段をつけさせるために、自社の技術を早めに見せておく必要があったのか、あるいはその両方だったのか。

 5つめの疑問は、UberによるOtto買収のタイミングに関するもの。LevandowskiはGoogleから少なくない額(”multi-million dollar”)の報酬を受け取ったのちに、UberにOttoを売却していたそうだが、これがたまたまそういう順番になったのか、それとも何かの事情でそこまで待つ必要があったのか。

 6つめの疑問は、Waymo側が主張する持ち出された情報の価値。「5億ドル以上」とされる金額は、どういった算定で出てきたものなのか。

 以上のような疑問が次々と浮かんできて、事細かに挙げていくときりがない。今後の展開に期待したいものだ。

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