「不動産×IT」が生む新経済パラダイム--大量生産型から“生活者参加型”に - (page 2)

月森 正憲(寺田倉庫)2017年02月28日 08時00分

スペースのIT化を阻んでいた2つの要因

 1つ目、それは信用の有無にあるように思います。今までは部屋を貸してと言われても、部屋はプライベートかつデリケートなものですから、なかなか他人に貸すことはできませんでした。しかし、SNS上の“LIKE”などのレビューが、実社会にも通用するほどの確かな信用になったことで、会ったことのない他人でも部屋を貸すという信用関係が誕生し、スペースのIT化の実現に至りました。言い換えれば、SNSは信用を証明するツールでもあるのです。

 また、マクロ経済的な観点ですが、経済成長が鈍化する中でサステナブルな社会活動を実現するためには、雇用時間とは別の資産の有効活用は不可欠になりました。言い換えれば、以前は十分に所得もあり、また将来展望も明るく見通せたため、給与以外の対価を得る必要もあまりありませんでした。

 このように、信用関係と経済状況の変化が、スペースのIT化を後押ししたと言えるでしょう。ただし、最も決定的な理由となったのは、シェアリング・エコノミーがITによって確立したことが大きいと思います。それでは、この古くて新しい経済パラダイムをどう活用すればいいのでしょうか。

シェアリング・エコノミーは消費者を生活者にアップデートする

 Airbnbはシェアリング・エコノミーを象徴するようなサービスです。ご存じの方も多いと思いますが改めて説明すると、シェアリング・エコノミーとは、個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスによって成り立つ経済圏のことを指します。

 例えば、私の家にほぼ使っていない部屋があった場合に、その部屋を宿泊施設としてAirbnbを介して他人に貸し出すことで、私は収入を得ることができ、また、宿泊施設を探しているユーザーはホテルを借りるよりも安価に利用できるというメリットがあります。双方に良いことがある、というのがポイントです。

 そして、先ほども説明しましたが、メリットを感じられても実際に貸し借りするという行為を実現させたのは、信用関係の存在です。AirbnbはSNS認証で、レビューされあった個人が取引に参加できるようになったことはシェアリング・エコノミーの実現に大きく寄与したと思います。SNSの他ユーザーから評価されている売り手・買い手を見ることで、会ったことはなくとも、そこに信頼を持ち込むことができるようになったと言えるでしょう。

 モノにあふれた時代だからこそ、モノやスペースを占有的に利用するのではなく、共有的に利用することで、モノの貸し手も借り手もWin-Winの関係を築くことができます。また、別の見方をすれば、今まで消費活動だけに留まっていた消費者を、Win-Winの関係性を築く経済生活の担い手として参画させることにもつながります。大量生産型に代わる、生活者参加型という新しい経済パラダイムのはじまりです。参加できるというところにワクワクを感じるのではないかと思っています。

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