2016年10月、日本経済団体連合会(経団連)の1%クラブから「2015年度社会貢献活動実績調査結果」が発表された。
本調査は、1991年から毎年実施されているもので、経団連加盟企業の社会貢献活動に関する実績をまとめたものだ。あくまで経団連加盟企業という大手企業が対象ではあるが、企業セクターにおけるCSRや社会貢献活動への取り組みの動向を把握する1つの情報としてご紹介したい。
調査内容は、社会貢献活動支出と社会貢献活動事例(3年ごと)の調査が基本である。今年度は、東日本大震災や熊本地震からの復旧・復興の取り組み状況や具体的な事例なども紹介されている。調査対象は1363社で、回答率は25%程度となっている。
社会貢献活動における支出額合計は1804億円で、1社平均でみると5億4000万円(前年比10.2%増)。1社平均支出額は、3年連続で増加している。
東日本大震災関連の支出を除いた金額は1741億円で、1社平均支出額は5億2100万円(前年比12.0%増)。調査開始以降ではもっとも高い水準であり、災害からの復興支援以外での純然たる社会貢献活動への意欲の高まりが伺える。
社会貢献活動の中でも、社会貢献を目的とする金銭寄付のほか、現物寄付、施設開放、社員の参加・派遣などが含まれる各種寄付の合計額は1356億円で、1社あたりの平均支出は4億600万円。
この中で、金銭寄付の合計額は1020億円、1社あたりの平均支出は3億500万円となっており、NPOやNGOからのニーズの高い金銭寄付が前年比14.7%の伸びをみせている。
分野別にみると、上位3つはこれまでの傾向とも変わっておらず、1位が4年連続となる「教育・社会教育」(20.2%)、2位が「健康・医学、スポーツ」(14.4%)、3位が「学術・研究」(13.0%)。これら3分野で約半分を占めている。
興味深いのは、4位に「地域社会の活動、史跡・伝統文化保全」が入っている点だ。
これには地域の活動への参加や協賛、施設開放、地域住民を招いたイベントの開催、史跡・伝統文化の保存などが含まれているが、企業が地域コミュニティへの関わりを深め始めていることが伺える。
ISO26000(社会的責任のガイダンス規格)でも「コミュニティへの参画及びコミュニティの発展」が明示されているが、人権や労働慣行などの”守りのCSR”ではなく、より積極的に地域社会に関わっていく”攻めのCSR”が浸透し始めたのかどうか、今後の動向を見守っていきたい。
さて、ここまで企業の社会貢献活動の概要を紹介してきたが、災害からの復興支援についてみていこう。
東日本大震災からまもなく6年。世間的にはその風化が危惧されているが、復旧・復興の取り組みを行っている企業は約7割。海外を含む災害被災地関連支出額は76億円であるが、そのうち東日本大震災関連支出は63億円、1社平均支出額は1900万円となっており、大半を占めている。
東日本大震災関連の復興支援活動に対しては、継続的な支出はみられるものの、前年度は合計90億円、1社平均で2500万円であったことから、支出額自体は減少傾向にある。
活動の大半は、社員のボランティア活動参加、金銭寄付、NPOなどとの協働による自主プログラムだ。分野別では、コミュニティ支援、次世代育成・教育支援、産業再生・雇用創出支援が上位を占めるが、前年度と比べ、中間支援組織への支援が拡大している。
長期的な災害からの復興には、地域全体の実態を把握する立場にいる中間支援組織への支援強化が不可欠だ。応急処置ともいえる緊急支援のフェーズから、長期的なまちづくりに向けて、今後、企業と中間支援組織の連携の重要性は益々高まっていくだろう。
一方、昨年4月に発生した熊本地震に対しては、復旧・復興の取り組みを行っている企業は約9割にのぼっている。その大半は、金銭寄付や現物寄付、社員ボランティアだ。
東日本大震災では、NPOやNGO、行政機関、公益法人などとの連携を通じた支援が多いが、熊本地震では金銭寄付の比重が高いこともあり、これらに加えて日本赤十字社などとの連携が多くなっている。
本調査が熊本地震直後の5~8月に実施されたということも影響しているだろう。あくまで経団連加盟企業という前提ではあるが、企業の社会貢献活動は、東日本大震災直後のような規模ではないにせよ、当たり前のものとして定着しつつあるように思える。
これからの課題は、社会貢献活動による社会的インパクトをどこまで意識し、実践できるかということに尽きるだろう。いよいよ量から質への転換が求められるということだ。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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