以前当連載では、性的なメッセージや写真を携帯電話宛に送る、いわゆる「セクスティング」についてご紹介したことがある。このような事例は非常に多く、リベンジポルノにつながる例も多い。
2014年には、消防士の男(30)が女子中学生(12)と無料通話アプリを通じて知り合い、裸の写真を送らせて児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで逮捕されている。消防士の男は、「かわいいね」「好きだよ」などと送って女子中学生の気を引いた。そして「着ているパーカーのチャックを開けて見せてごらん」などとメッセージを送り、届くと徐々に下着姿、顔が入った上半身裸の写真などとエスカレートしていったという。
女子中学生は「脱ぐのは怖かったけれど、優しい言葉をかけられて嬉しくなってしまった」と答えている。消防士は過去に10回以上同様の犯行を繰り返しており、「プロフィールを見て中学生を狙った」という。このように、好意をちらつかされて送る例、プリペイドカードなどと引き換えに送る例などがあるが、一度応じてしまうと「画像をばらまく」などと脅迫され、何度も応じざるを得なくなる例も多い。
ある弁護士事務所の相談コーナーでは、性犯罪、トークアプリに関する質問と回答が読める。そこでは、「LINEで知り合った女子高生に猥褻画像を送らせてしまったが犯罪となるか」「知り合った女子小学生と女性と偽ってやり取りをし、裸画像を送ったが逮捕されるか」「LINEで女子中学生と下半身画像を交換したが逮捕されるか」など、非常に多くのユーザーがLINEなどを通じて知り合い、裸の写真を送り合っていることがわかる。
「警察に叱られるかもしれませんが逮捕まではされません」という回答が多いが、「逮捕されます。自首してください」というものもある。回答時は逮捕されないという判定だったものも、東京で条例が変われば逮捕される可能性が出てくる。
「彼氏がいろいろな写真を送ってと言ってくる」と友だちに相談している女子高生がいた。どうも、要求には性的なものも含んでいるようだった。彼女は悩んでおりまだ送っていないようだったが、「彼氏にふられたくない」と言いなりに送ってしまう子は多い。中には、彼氏に請われて画像を送ったところ、友だちの間で共有されてしまい、学校に行けなくなった女子高生もいる。このようなリベンジポルノ被害も起きているのだ。
東京都が検討しているように、自画撮り画像を送ることを求めただけで取締りができるようになることは意味があるだろう。しかし、それだけでは被害を完全に防ぐことはできない。
被害を防ぐためには、そもそも裸の写真は撮影しないことを子どもたちに教育する必要がある。信頼できる相手、たとえば付き合っている相手にでも送らないこと。意図的に拡散されたりせずとも、ウイルスによって端末の中身をすべて抜かれたり、撮影していた写真などが流出する例も多い。
写真はコピーも容易であり、裸の写真はすぐにネット上で拡散されてしまい、回収することは不可能となる。裸の写真がネット上に出回っているのを気に病んで、家から出られなくなった女性もいるなど、将来に及ぼす影響は大きい。特に女児、女生徒の保護者は、必ず子どもに指導するようにしてほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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