ウェブ会議システムを提供するブイキューブと、AIを開発するNextremerは、2月6~12日まで羽田空港 第2旅客ターミナル内で、AIを活用した対話システムの実験導入を実施。旅行者などに体験してもらうことで、システムの実用性を検証した。
両社は、羽田空港内でロボット製品(プロトタイプ含む)を実験導入する「羽田空港ロボット実験プロジェクト2016」の第1期事業者に選定された。同プロジェクトは、羽田空港を管理・運営する日本空港ビルディングが設置した、“オール羽田”でロボットの技術検証をする組織「Haneda Robotics Lab(ハネダ ロボティクス ラボ)」が推進している。
1日に数十万人が訪れる空港には、多くの顧客からさまざまな問い合わせが寄せられる。今回の実験では、対話システムによる利便性の向上だけでなく、案内業務において人間をサポートする“AIと人との協業システム”の効果や、労働人口減少にともなう代替労働力としての活用の可能性なども検証した。
実験で使用したNextremerの「MINARAI」は、高度な自然言語処理機能を備えた対話システムで、博士と助手という2人のキャラクターが会話調で質問に答えてくれる。日本マイクロソフトのCognitive Services:FaceAPIを導入しており、カメラに映った顔からユーザーの性別や年齢を検出できる。会話が破たんした際には、ブイキューブのウェブ会議システムに切り替えて、人間のオペレーターに会話を引継ぐことが特徴。また、人間同士の会話パターンをAIに学習させることで、会話の精度を上げていくという。
筆者は実験導入の期間中に、羽田空港でこの対話システムを体験した。質問に対する認識精度は予想以上に高く、たとえば「北海道に行くんですが、寒すぎて風邪を引いたので病院はありますか」といった複雑な内容を早口で話しても、言葉の優先順位を正しく理解し、「1階に『東邦大学羽田空港クリニック』があります」と即座に返してくれた。また、「トイレはどこですか」「お土産を買いたい」といったシンプルな質問には、フロアマップ付きでその場所を教えてくれた。
ロボットなどを含め、これまで各社から提供されてきた対話システムと比較すると、認識の精度や返答までの速度、そしてその内容もかなり実用的なレベルに達していると感じた。ただし、騒音時など周囲の環境や、質問者の話し方によっては認識に失敗することもあった。たとえば方言で質問を受けたり、いたずら目的で同じ質問を繰り返し受けたりすると正常に機能しない可能性はありそうだ。
こうした事態に備えて、質問の認識が困難なシーンでは人間のオペレーターに会話を引継ぐ。MINARAIにおいて会話の破たんを検知すると、遠隔地で常駐しているオペレーターがブイキューブのウェブ会議システムに画面を切り替え、質問内容を聞き直して回答する。実際に設置されたマイクを使ってオペレーターに話しかけてみたが、特に遅延などは発生せず、スムーズに質疑応答することができた。
MINARAIは現在、日本語と英語の2言語に対応しているが、質問に即座に答えられるように、タッチパネルで言語を切り替える方式を採用しているという。今後、さらに精度や処理能力が上がれば、対応言語で話しかけるだけで、その言語で返答できるようになる予定だと、NextremerのCEOである向井永浩氏は話す。
両社は、2016年9月の高知銀行への導入を皮切りに、東急沿線各駅やNEXCO東日本の高速道路サービスエリアなどにおいて、対話システムの実験導入を進めてきた。向井氏によれば、事例が増えるたびに対話の精度が向上しているとのことで、今後はユーザーごとに対話内容を最適化するなどの機能連携も進めたいと話す。また同システムを、デジタルサイネージや銀行の無人店舗、エンタメ施設など、幅広い分野で展開していきたいとした。
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