ブイキューブグループのブイキューブロボティクスジャパンは10月11日、ドローンを活用したIoTプラットフォームを開発するシンガポールH3 Dynamicsと、業務用ドローンにおける戦略的パートナー提携を締結したと発表した。ブイキューブロボティクスは、H3 Dynamicsの全自動ドローンシステム「DRONEBOX」の国内独占販売を開始する。
DRONEBOXは、専用ドローンと、有線・モバイル回線に対応した通信設備、無接点充電装置を内蔵した基地をセットにしたシステム。あらかじめ決められたルートを自動飛行するほか、充電、離発着なども自動で運用できるため、操縦するオペレーターの配備が困難だったエリア・用途での運用が可能。完全自動運用のドローンは世界で6社ほど取り組んでいるが、実際に利用可能なシステムとしては、DRONEBOXが初だとしている。
ドローン自体は45分の連続飛行が可能。複数のドローンとベースステーションを数珠つなぎのように組み合わせることで、より広範囲での運用も可能となる。発着時は、DRONEBOXの扉が開き四方1メートルのヘリポートが自動で昇降し離陸する。着陸時は底面のカメラとビーコンで位置を高精度に認識し、ほぼズレなく降下する。乱気流の発生を避けるため羽根を止めて急落下するドローンが多い中、着陸時まで安定して飛行するのも特徴だ。
通常、ドローンが捉えた映像はプロポ(送信機)以外にリアルタイムで確認することはできず、きちんと撮影されたかどうかはドローン内の記録データを確認するしか方法がなかった。そのため、熊本地震などでも災害状況の把握のためにドローンを飛ばしても、確認したいところが映っておらずもう一度飛ばすなど時間と手間がかかっていた問題がある。
DRONEBOXでは、ブイキューブが持つ業務用ウェブ会議システムを組み合わせることで、ドローンが捉えた映像をベースステーションをハブに配信し、複数拠点でのリアルタイム受信を可能にしている。このため、災害用途の場合では、警察、救急、災害対策本部などが同じを映像を見ながら会議できる。企業でもメンテナンスなどで同様の使い方が可能だ。
今のところ、完全自動運用については専用のドローンが必要だが、ブイキューブロボティクスでは今後、複数のドローンに対応するとしている。また、ドローンに搭載するカメラを赤外線タイプに載せ替えることで、メガソーラーの点検(異常なパネルは熱を持つ)のほか、害獣・人物の感知も可能となり、応用の幅が広がってくる。
また、画像認識技術との組み合わせも想定しており、例えばコンクリートのひびや石油コンビナートの石油シミなど、設備に何らかのトラブルが生じていると認識した場合にのみアラートを出すことで、常にドローンの映像を監視する人員なしでの定期点検も実現できるとしている。そのほか、実験段階ではあるものの特定の害虫を画像検出し、ピンポイントでの農薬散布なども可能になるという。
ブイキューブロボティクス代表取締役社長の出村太晋氏は、「人がドローンを動かすには限界がある」としており、「24時間365日ドローンによる点検を実現し、本当に業務効率化しようとした時には全自動が望ましい」と半年前から構想を描き始めたという。「人間がものすごい労力をかけている部分をすべて機械に変わってもらい、人間はもっと生産性の高い作業に注力できるようになる」としている。
こうしたドローンの登場により、ブルーワーカーの働き口がなくなる可能性が考えられるが、出村氏によると「むしろ人員が足りなくなっている状況」だという。電力会社や通信事業者では、若い人が鉄塔に登ることは少なく、熟練したスタッフも高齢で登れなくなっている課題がある。また、事故のリスク低減も含め、ドローンによる点検はこうした問題の解決策として期待されている。
今後は、日本市場向けDRONEBOX関連の共同開発として、両社が持つ映像コミュニケーションシステム、ドローン自動運用システム、水素電池などの新技術(H3 DynamicsはもともとMILスペックの電池を開発するメーカーで、水素電池で3~4時間の飛行が可能になる)を融合し、さまざまな業務で利用できるドローンシステムを開発するとしている。
ブイキューブロボティクスでは、2016年秋ごろから国内で実証実験を開始し、2017年3月ごろまでの商用利用を目指す。また、海外から引き合いがあれば他国展開も考えているという。価格はソリューションで提供するため一概ではなく価格も決まっていないとしつつ、DRONEBOX、メンテナンス、映像配信システム、保証などを込みで月額数十万円(100万円いかない程度)としている。
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