トランプ政権による移民入国制限の大統領令発令に対して、シリコンバレーの各社をはじめとする多くの米企業が反発し、その意思表示として法廷助言書を連盟で提出したことが先日報じられていた。今回はこの話に関して頻繁に登場するH-1Bビザ(非移民就労ビザ)をめぐる話を紹介する。
この問題に関してシリコンバレー側の主張を擁護するNYTimes記事には、移民受入制限が愚策であるとする主張の補強材料として興味深いデータが2つ紹介されている。
ひとつは、いわゆるユニコーン企業(10億ドル以上の評価額をつけたベンチャー企業)87社のうち、移民の創業者が含まれる企業が半数以上に上るというデータで、これは2016年にNational Foundation for American Policyというシンクタンクが実施した調査の結果だそうだ。もうひとつは、Partnership for a New American Economyというグループが2011年に実施した調査で、それによると「Fortune 500ランキング」に入る大手企業の40%以上が移民または移民の子供によって創業されたという。
どちらも「門戸を広く開いていたからこそ、世界中から優秀な人材が集まり、それがAppleやGoogleをはじめとする巨大企業の誕生につながった。それを通じて(高いサラリーを得られる)たくさんの雇用が生み出された」という主張を補強するものといえよう。
米国を代表する産業となったテクノロジー産業。その渦中に身を置く人間からすると、Trumpの大統領令は米国にとっての「金のガチョウ」を殺してしまいかねない危うい措置といえる。
問題の大統領令に関し、政権側はあくまで「国内でのテロリスト対策」と言い張っているのに対し、反発する企業側ではこの大統領令が移民政策の大幅な変更につながるのではないかとの危惧を抱いている。
Donald Trumpの側近のなかには、白人至上主義的な発言を繰り返してきたSteve Bannonという人物がいるので、そんな懸念を抱かれても不思議はない。Bannonは過去にラジオのインタビューでTrump相手に「シリコンバレーの起業家や経営者の半数以上がアジア系で(憂うべきこと)」などと発言していたことが報じられていた人物だ。
またJeff Sessionsという上院議員はBannonのラジオトークショーに登場した際、1924年の移民法("Johnson-Reed Act"、「排日移民法」との呼び名も)を称賛したことが伝えられているが、なんと司法長官候補に推されて議会に承認され、先ごろ就任したということもあるので、反対を表明した企業側やその社員らの懸念も過剰な反応とは思えない。
さらに、シリコンバレーの企業各社が労働力を確保する上でなくてはならないとされる「H-1Bビザ」の発給基準について、政権側が見直しの準備をすでに始めているという話も1月末に流れていた。
比較的安いコストで確保できるこの労働力(H-1Bビザ取得者)への依存率は、もっとも高いFacebookあたりだと15%以上という話もある。このビザ発給に関する締め付けが現実になると、影響を受ける各社の間で少なからず混乱が生じることは十分予想できる。
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