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トランプ政権vsシリコンバレー激突で争点となる移民問題 - (page 2)

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H1-Bビザで割を食う米国人労働者

 「米国内ではみつけるのが困難な専門職」を対象とするH1-Bビザだが、現実にこの制度による弊害は生じている。NYTimes記事には、H1-Bビザ取得者に仕事を奪われる米国人労働者の例が紹介されている。

 たとえば、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の医学部で20年ほどITシステム管理者として働いてきた55歳の男性。勤め先が、インドのアウトソーシング会社(人材派遣会社)のローコストの人材に切り替えることを決めたことで、約80人の同僚とともに解雇されるだけでなく、自分の仕事を引き継ぐインド人の指導までビデオ会議でやらされる羽目になったという。

 この男性のサラリーは記されていないが、別の例――東部の電力会社に勤めていて同様に解雇された男性の場合は年収13万ドル、それに対してH-1Bビザを取得した後任担当者の場合は6万ドル(H-1Bビザに関して定められた最低額)で、さらにこの担当者と連携するインド在住の労働者の場合は1桁下の6000ドルにすぎないなどとも書かれている。

 こうしたマイナス面だけをみると、ビザ発給基準の厳格化(現在はくじ引きで、インド系の大手企業などがたくさん申し込んでいたりする)や最低金額の引き上げ(10万ドルまで引き上げる案が検討されている)などは、Trumpの掲げた「ミドルクラスの雇用確保・創出」という公約とも合致し、一概に悪いことばかりではないようにも思える。

宝くじ同然のH1-Bビザ

 ビジネスニュースサイトのQUARTZには、このH1-Bビザ取得を切望するインドのITエンジニアの話が出ている。シリコンバレーの基準で言えばさして高くない、あるいは最低レベルのサラリーでも、インド国内にいては到底手の届かない金額であるため、国外(その多くは米国)でしかもドルで稼げる仕事につくことは「中流家庭出身のエンジニアにとって人生を左右する一大事」だという。

 同記事ではインドの各地に存在するというビザ寺院の話が紹介されている。日本にも願掛けのお百度参りというのがあるが、同じようなことがビザ取得希望者の間で行われているらしい(「願掛けの際には、寺の建物のまわりを11周してココナツを奉納する」「めでたくビザを手にいれた暁には、お礼参りにいき寺の周りを108周することになっている」などとある)また、結婚相手を決める際にも米国のビザを取得した男性は随分有利で、女性からの持参金の額も跳ね上がるらしい。

雇用が国外流出する懸念も

 もうひとつ、グローバル化したIT企業の場合には、仕事自体が国外に流出してしまうのではないか、という懸念も指摘されている。

 現在、米政権や与党共和党では国境税を設けて、自動車やスマートフォンなどを輸入して米国内で販売する場合には20%程度の税金をかけるという案が検討されている。同様のことはソフトウェア関連の仕事などでも不可能ではないだろうが(たとえば米国企業が直接外国企業に発注する際)、研究開発などの場合はどうなるのか。

 WSJではカナダの例を挙げて、MicrosoftやApple、Google、Facebookなどが拠点を設けていることを指摘。これまではカナダの大学を卒業した人材がシリコンバレーの企業に流れていたが、近年ではベンチャー育成の環境なども整ってきており、規模ではまだ及ばないが人材と資金が集まる好循環も生まれ始めているという。

 そうしたお金と人を集めるハブが米国外に多数生まれれば、米国の相対的な競争力はどうしても低下してしまう可能性も当然思い浮かぶ。

 この移民政策の問題は、以前から懸案となっている税制改革と併せて、随分とやっかいなものになりそうな予感がする。

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