1月16日、ミャンマー・ヤンゴンの路線バスシステムが改定された。300近くあった路線を統廃合し、60本代に削減。改定前は同一ルートに複数の番号がついていたり、同じ番号でも何通りものルートや終発着点があったりと、混乱していたものを整理した。結果、元の路線は1本残らず変更となった。
ヤンゴン市では、市内全域でバイクの運転を禁止しており、自転車も大きな道路では走行禁止のため使い勝手が悪く、庶民の足を担うのはもっぱらバスだ。このバス路線を根本的に変えたのだから、当日は混乱が予想された。そこで当局は改定日から3日間、バス停に立って乗客を案内するボランティアを募集した。
ミャンマーには、功徳の積み重ねを重視する上座部仏教の敬虔な信者が多く、世界ボランティア指数でも2年連続1位に輝くほどのボランティア好き。そんな彼らが、困っている人を助けられるこんな“ビッグチャンス”を逃すはずはない。当日は4000人ほどがバス停で案内にあたり、複数の企業がバス路線図を自前で印刷してバス停で配布。3日にわたり、街全体がボランティアムードにあふれることとなった。
路線変更で乗り換えが増え、運賃がかさんでしまった人が郊外の貧困層に多いといった問題も取りざたされているが、おおむね混乱はなく、とりあえず新システムは稼動している。
新しい路線が発表されたのは、施行の数日前という慌ただしさだったが、新システムを開始してから目立ちはじめたのが、路線アプリの無料配信だ。10日後の1月26日時点で、少なくとも10本以上の非公式路線アプリが確認できる。
ソフトウェア開発会社が宣伝を兼ねて配布しているものもあるが、まったくの個人によるアプリも多い。無料アプリで広告収入が得られる仕組みにもなっていないので、これらの路線アプリの多くは、完全なボランティアアプリといえる。
ミャンマーにモバイルインターネットが普及してまだ2年ほど。その間、今回のバス路線改定のような、多くの人びとがアプリの必要性を感じる出来事はなかった。まさに、ソフト開発能力を持つ人にとって、ボランティア精神を発揮する格好の舞台だったといえる。現在のところ、新作アプリはまだ増え続けており、当面ボランティア合戦は続きそうだ。
(編集協力:岡徳之)
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