2016年に続き2017年も韓国・釜山で「2017Drone Show KOREA(ドローンショーコリア)」が開催された。
昨年は韓国で初めてであり、「アジア最大」との触れ込みで開催された本格的なドローンの展示会とあって、韓国内では大きな関心を持って報道されていたが、今年も88の企業や団体が出展した。これは昨年の56社や団体と比較しても増加していて、韓国のドローン産業が相変わらず活発であることを裏付けていると言える。
また、ショーを誘致している釜山市は日本や中国をはじめとする東アジアや東南アジアとのアクセスの良さを生かし、自治体を挙げて「ドローン産業」のバックアップを推進している。韓国では1月末までが小・中学校の冬休みということもあり、会場は親子連れや、若年層から中高年まで多くの観客でにぎわっていた。
企業からの出展もさることながら、2017年は特に大学や自治体が出展しているケースが目についた。「大学特別ブース」が設けられ、地元釜山大学や航空大学の学生たちが製作したドローンが展示された。
また、これに併せてショースペースの一角には児童・生徒向けのコーナーが設けられていた。「ドローンDIY」というコーナーでは、自分だけのオリジナルドローンを製作できたり、ドローンの試験飛行を体験できるコーナーもあった。
近年では、学校の課外授業でも「ドローン」の講座が新設され人気を集めている。小学6年生ながらプロのドローンレーサーとして国内外のレースで好成績を収め活躍するキム・ミンチャン君の存在なども、韓国のドローン人気に一役買っていると言えよう。
このように若い世代がドローンへの興味を持ち、親しみやすい環境を作り出すことで、ドローンの開発や研究を「次世代」に担ってもらおうという狙いがあるのかもしれない。
今回、発表や展示されていたドローンは「農業」や「災難救助」を目的としたものが多かったことが特徴である。出展企業の中には、地方に拠点を置く中小企業も多く、農業分野でのドローンの開発に力を注いでいる。
日本以上に高齢化が進む韓国では、農村部の高齢化が著しく後継者不足も深刻だ。このため、農村部での農作業にドローンを投入させる自治体が増えていたりと、農業用のドローンの注目度は高い。
このほか、災害や軍事活動でのドローンも注目度の高さを示していた。「ソウル市消防庁」は火災発生現場で実際に活用されているドローンの展示とその様子をVTRで公開。同じく「警察庁」も事故や災害での行方不明者の捜索現場で活躍するドローンを披露していた。
さらに、ショー開催中には、制服を着用した空軍関係者や兵役任務中の兵士たちも会場を訪れていた。空軍関係者は、企業関係者による衛星中継や災難救助向けのドローンの説明に熱心に耳を傾けていた。やはり、軍事分野においても監視や調査、災害時の物資支援といった目的でドローンの技術や投入に高い関心が持たれ、積極的な活用が検討されていることがうかがえる。
また、2016年と異なり驚いたのは「海洋」で活用されるドローンの存在感である。今回、初めての出展となった「韓国海洋科学技術院(KIOST)」「船舶海洋プラント研究所(KRISO)」はともに、海洋調査・開発のためのドローンを公開。いまだ未知の部分が多い深海調査を海洋ドローンによって実現できることをアピールした。
「ドローン=空」というイメージが強かっただけに、「海洋ドローン」は「空」のみならず「海」でもこれからドローンの開発や活用の場が広がることを予感せるものであった。
このように、ショーでの活気と盛況さを見ると「ドローン産業」分野でのさらなる躍進が期待まれるものの、不安材料があることも否めない。それは、2016年秋より韓国を騒がせている大統領とその周辺をめぐる国政混乱である。
パク大統領が長年、友人の女性を公私にわたり国政に介入させていた問題は国民に大きな失望と衝撃を与えた。結果、ソウルなどの都市部では週末ごとに大規模なデモが敢行され、大統領の支持率は急落、国会で弾劾が可決され、追い込まれた。これらの一連の流れは、日本でも大きく取り上げられていたので、記憶に新しいことと思う。
6月にはパク大統領に変わる大統領を選ぶ選挙が実施されるということで一見、ひと段落したかに見える国政であるが、いまだにパク大統領周辺の側近や関係者が捜査対象になったり、逮捕されるなど事件は終わりが見えていないのが現状である。
さらに、韓国を代表する企業であるサムスンもこのスキャンダルに関わったという疑惑が強まり、実質上のトップを務めるイ・ジェヨン副会長が逮捕状を請求される事態にも発展している(ただし、逮捕状の請求は一旦、棄却されたため今後の状況は不透明である)。
韓国はかつて「IT大国」として名を馳せたように、「ドローンの分野でももう一度」という思いの強さが感じられるが、それは国のバックアップがあってこそ成り立つもの。国政、経済共に混乱を極めた状態の中で、国家と自治体、さらには企業が一体化した「ドローン産業」の発展が停滞する事態も否めず危惧すべきところであり、今後の動向にも注視が必要と言えよう。
(編集協力:岡徳之)
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