日本においてドローンは購入や操縦が厳しく規制され、近年頻発したドローンによる事件や事故によって、世間にマイナスイメージがついてしまっている感が否めない。
お隣の韓国では、日本と比較するとまだまだドローンに関する規制は緩やかだ。誰でもインターネットや大型アウトレットの店舗などで簡単に購入できる上、趣味としてドローンを所有、飛行している人もいる。現に同好会のようなサークルも多く存在している。
インターネットで「ドローン」を検索するだけで、実に多種多様なドローンを品定めすることができる。たとえば、リーズナブルなものであれば、5万ウォン(日本円で約4700円)台から購入できる。また、子ども向けのドローンも人気だ。子ども向けとはいえ機能や性能も高く、飛行中も本格的な撮影ができる。価格は20万ウォン(約1万8800円)ほどだ。
近年は、ソウルや釜山などでドローンレースも盛んに開催され、大手企業がスポンサーになるなど、韓国国内でのドローンレースの地位も確かなものとなりつつある。
3月に中東のドバイで開かれた世界最大規模の国際ドローンレース「World Drone Prix」にも、韓国4チームから4選手が参戦。このうちの1チーム「GIGA5」に所属するキム・ミンチャン、ソン・ヨンロクの両選手は、1月に開かれたドローン大会で共に優勝、準優勝を果たすなど、韓国でもっとも注目されている選手たちである。
こうした現状もあって、韓国では国をあげてドローン産業に力を入れていこうという動きが活発化している。韓国ドローン産業振興協会や朝鮮日報などの主要メディアによると、現在、世界市場における韓国のドローン産業は、技術力については7位、特許数については5位と位置づけられている。ちなみに1位はシンガポールで、韓国は今後10年で世界1位になる目標を掲げている。
そんな中、1月に韓国で初めてのドローンショー「2016Drone Show KOREA」が、第2の都市・釜山(プサン)で開かれた。今回のショーがソウルではなく、釜山で開催された背景には、釜山が東アジア、東南アジアの各都市から近く、コンテナ貨物のハブとなる釜山港を抱え、地理的に恵まれていること。また、釜山市が「ドローン産業の拠点」として企業や研究所の誘致活動をしていく方針を打ち出したことにある。
大韓航空のドローン研究開発を管轄する「航空宇宙事業本部」はセンターを釜山市に置いているほか、実に43のドローン関連企業が釜山市とその周辺に集中している。また、釜山大学がある金井(クムジョン)区は、大学の研究所と共同で同区内にドローンの飛行試験、教育訓練をする「金井山城多目的広場」を建設するなど、ドローン産業への動きが活発となっている。
このように、ソウル首都圏と比較しても、釜山市とその周辺では、空港や原子力発電所、軍事施設の一部地域を除き、一般のドローンが飛行できる空域が多い。また、都市でありながら、山も海もある恵まれた地形がドローンファンにとって撮影地として人気が高いことも、釜山のドローン産業を後押ししているといえる。
日本が東京への一極集中であるのと同様に、韓国もソウルへの一極集中による地方との格差が大きな問題となっている。そんな中、第2の都市である釜山がドローンよって地方活性化に一石を投じ、かつて韓国が「IT大国」として名を馳せたように、ドローン産業でも成功したいという意気込みが感じられる。
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