「Firefox」の開発元であるMozilla Foundationでエグゼクティブディレクターを務めるMark Surman氏によると、インターネットの多くの部分は非常に危険な状態であり、われわれネット利用者はこれを救うために全員で協力する必要があるという。
われわれは過去30年にわたるウェブの隆盛に畏敬の念を抱いているかもしれないが、Surman氏はインターネットが危険なほどに不健全な状態にあることを示す多くの兆候を挙げた。そうした兆候は、2016年に発生したボットネット「Mirai」による攻撃から、市場の集中、政府の監視や検閲、データ漏えい、イノベーションを阻む政策まで多岐にわたる。
Surman氏は、「この貴重な公共の資源は、今後も安全で、セキュアで、信頼できるものであり続けられるのだろうか。生き延びることができるだろうか」と疑問を投げかけている。
Surman氏は、モノのインターネット(IoT)、自律型システム、人工知能(AI)を挙げて、「インターネットがまさに文字通り、われわれを包み込もうとする時代に入りつつある今、こうした疑問の重要性はさらに高まっている」と言葉を続ける。この世界では、われわれはコンピュータを使うのではなく、「その中で暮らす」のだと同氏は指摘した。
「(インターネットの)仕組みや、それが健全かどうかは、われわれの幸福やプライバシー、財産、経済、民主主義に直接影響を及ぼす」(Surman氏)
Surman氏が行動を呼びかけるのと同時に、非営利団体のMozillaは今回初めて「Internet Health Report」の「プロトタイプ」を公開した。このレポートでは、インターネットを形成している健全なトレンドと不健全なトレンドに目を向けている。5つの主要な分野として挙げられているのが、オープンイノベーション、デジタルインクルージョン、分散化、プライバシーとセキュリティ、ウェブリテラシーだ。
Mozillaは、このプロトタイプにフィードバックを取り込んで、10月以降に最初のレポートを公開する予定だ。
現在、11億を超えるウェブサイトが主にオープンソースソフトウェアを使って運営されていることは、オープンイノベーションにとって明るい兆しだ。しかし、Mozillaによるとインターネットは、時代遅れの著作権法や、秘密裏に交渉される貿易協定、制約のあるデジタル著作権管理など、悪い政策による「問題から身をかわして逃げ回っている」状態だという。
同様に、モバイルなどのおかげで現在では30億人以上がインターネットを利用しているが、2016年にインターネットが遮断されたケースは56件にのぼり、2015年の15件から増加したという。
Mozillaは、インターネットの分散的な構造について、発展し、法律で守られる一方で、メッセージングや商取引、検索を独占するFacebook、Google、Apple、Tencent、Alibaba、Amazonなど、少数の主要な企業が世界のインターネット分野を支配しているとしている。
「これらの企業は極めて価値のあるサービスを数十億人に提供しているが、同時に各社は、歴史上かつて見られなかった水準で人間のコミュニケーションや富を強固に管理している」(Mozilla)
Mozillaは、ウェブや通信において暗号化が広く普及していることを評価しているが、英国のいわゆる「詮索憲章」(Snoopers' Charter)など、新たな監視法の登場についても触れている。
Mozillaはさらに、2016年にDDoS攻撃を引き起こしたマルウェアMiraiを懸念として挙げるとともに、安全基準や規則、説明責任の取り組みを求めている。MiraiのDDoS攻撃では、セキュアでないウェブカメラやその他のIoTデバイスが悪用された。
今回のレポートでは、ウェブリテラシーを重視する政策にも注目している。これは、プログラムの書き方やコンピュータの使い方を学ぶばかりで、虚偽のニュースを見抜いたり、検索結果と広告を見分けたりする能力など、それ以外のリテラシー能力が無視されている現状を受けたものだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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