米ラスベガスで1月5日から4日間にわたって開催された世界最大規模の家電見本市「CES 2017」。50回目となる今回、米国内外から17万5000人以上が来場、3800社を超える企業が人工知能、ロボット、AR/VRなど先端テクノロジを駆使したプロダクトを披露した。
そして2016年に続き、2017年もさまざまなドローンが登場し、来場者やメディアの注目を集めた。今後のドローン市場の動向を占う上で重要となるキープレーヤーの展示に注目してみたい。
半導体大手インテルから約6000万ドルの出資を受け、協業しながらドローン開発を行う香港のYuneecが2017年のCESで発表したのは、産業特化型ドローン「H520」だ。同社はこれまで、空撮向けドローンや小型セルフィドローンなど、消費者向けドローンの開発に専念してきたが、H520の発表は今後産業向けドローンにも注力していくことを示している。
ボディカラーは現場で目につきやすいハザードオレンジ、CGO-ET(サーモグラフィーカメラ)、CGO-CI、CGO-3+と3つのカメラオプションが用意されている。サーモグラフィーカメラであるCGO-ETは、捜索・救助、太陽光パネル点検などでの利用が想定されている。一方、CGO-CIは歪みのない映像を撮影できることから、映画製作だけでなく正確性が要求される点検などでの利用が想定されている。
2017年第2四半期に発売予定で、販売価格はオプションにより2499~4499ドルとなる見込み。また、同時にソフトウェア開発キットも2017年第2四半期までにリリースされる予定で、各産業に特化したアプリケーションを開発できるようになる。
中国深センのドローンメーカーGDUは、折りたたみ式ドローン「Byrd」を展示。消費者向けの空撮ドローンとして位置付けられるが、保険や太陽光パネル点検にも活用できると期待されている。保険分野においては、家屋の損傷にかかる保険を請求する場合に必要な検査を、ドローンで実施するケースが増えており、Byrdのように持ち運びが容易で高解像度映像の撮影が可能な機種への需要は高まっているという。
今回がCES初出展となるフランスのドローンメーカーDrone Voltにも注目したい。2011年設立の同社は、ドローンを活用した産業向けソリューションとパイロット育成サービスを手がける企業だ。固定翼ドローン「DV WING」と大型クアッドコプター「Hercules20」を主力とし、建設分野と農業分野でのドローン活用を進めている。
以前ご紹介したように、ドローン活用ソリューションの世界市場は約1270億ドル(約15兆円)。そのうち最大は建設などのインフラ系で452億ドル、次いで農業324億ドル。建設と農業はドローン活用の2大市場なのだ。ここに目をつけているのがDrone Volt。CESを足がかりに米国市場、そして世界市場に打って出る計画のようだ。
ドローンの発展を予測する上で、半導体大手クアルコムの展示を見逃してはならない。同社がCES2017で披露したのは、最新版の飛行制御システム「Snapdragon Flight Drone Platform」だ。
この最新システムは、機械学習による自律飛行を可能にするもの。トラックキング機能や障害物回避機能だけでなく、画像認識技術により周囲にある物体を認識し、そのデータをもとに飛行経路を策定できる。驚くのは、外部のコンピューティングを必要とせず、物体認識から飛行経路策定まで、すべてドローンに搭載されたプロセッサだけで完結できるということ。この最新版の飛行制御システムを搭載することで、GPSが使えない屋内で障害物を認識し、回避しながら飛ぶことが可能になる。
自律飛行ドローンに関しては規制・法整備などの課題が残っているが、これらの課題が解決されたとき、人工知能搭載のスマートドローンが街のいたるところで仕事をしている姿を目にするかもしれない。
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