iPhone以上に筆者の生活を変えたのはiPad Proだった。
2016年3月に開催されたイベントで発表されたiPad Pro 9.7インチモデルは、単なるiPadの新機種という位置づけだけではなかった。プレゼンテーションでフィル・シラー上級副社長は、「PCからのリプレイスに最適」という紹介が行われたからだ。
その際に筆者は、MacBook Airが刷新されなくなることを予測し、実際に2016年11月のMacBook Pro発表会でそのことが確認された。
iPhoneが主要ビジネスとなっているAppleにとって、同じOSとアプリが利用できるiPadを、コンピューティングのメインストリームに引き上げようという意図を感じたことが、MacBook Air終焉の根拠となった。
依然として、パソコンとしてのMac、タブレットとしてのiPad、という見方があることには同意する。筆者も、パソコン > タブレット というコンピュータのヒエラルキーを意識しているからだ。
しかし、その概念を崩そうとしているのが、2016年のAppleにとってのチャレンジだった。
2016年4月以降、この原稿も含めて、筆者が仕事の多くをiPad Proでこなしてきた経験を考えると、パソコン・タブレットの境目を埋められるだけ、既にアプリが充実しているということだ。しかも、セルラーモデルなら、Wi-Fiを探さなくても仕事やコミュニケーションを途切れることがない。
これまで、PCを持ち歩く際は15インチMacBook Proを担いでおり、ACアダプタやアクセサリなどを含めると3kg以上になるカバンの中身は、iPad Proに変わってから700gにまで軽くなった。
またコンパクトであることから、狭い飛行機の座席やカフェのカウンターでも気軽に使えるようになった。デスクトップPCを持たない生活をスタートさせて久しいが、タブレットを主たるコンピュータとして使うようになり、より純粋なモバイル環境を手に入れた感覚だ。
アプリの充実は今後も続いていく。より多くの人が、iPadで十分役割を果たしてくれる環境が作られていくだろう。アプリ開発者次第という面もあるが、Microsoftが積極的にiPadアプリに対応している点は、タブレットへの移行を後押ししているように感じる。
販売台数全体を考えれば、iPadは引き続き、長い販売台数下落のトレンドの中にある。ただし、iPad Pro 9.7インチの投入後、販売台数の下落は止まっていないものの、売上高はプラスに転じている。平均販売価格が上昇したことが原因で、少ない台数でより多くの売上高を上げていく低成長時代に理想的な展開が期待できる。
iPhoneについても、より大きなストレージへ、より大きな画面へというニーズを掘り起こしていくことで、平均販売価格の上昇、すなわち少ない台数で同じだけの売上や収益を得る構造を作っていこうとしている。
ただし、iPhone SEや、依然好調な旧モデルとなるiPhone 6sシリーズなど、価格の安いiPhoneが売れていくことも重要だ。新興国やハイエンドを求めないユーザーへのiPhoneの普及は、平均販売価格と引き替えに進めていかなければならない。
このバランスが2017年にどのあたりに収まるのかにも注目していくべきだろう。
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