物流インフラが整っている日本では、物をいつでも正確に送れて当たり前。しかし、インドでは小包1つを届けるのにも一苦労である。今回は、インドの物流インフラが抱える課題を解決するスタートアップをご紹介する。その前に、まずはインフラの課題の中身に触れたい。
インドの物流市場は1600億ドル(約16.5兆円)にのぼり、GDPの約13%を占めている(2007年)。インド政府によれば、この市場規模は2020年までに約2倍の3070億ドル(約31.7兆円)に達する。「約13%」という比率は国土面積がインドの3倍のアメリカ(9.5%)と比べても大きい。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によれば、そのうちおよそ450億ドルはインドのインフラの「非効率性」から生まれたもの。そして、今のインフラの状況のまま経済成長が継続すれば、非効率性による支出はさらに増えていく。
また、インドでは現在、「Make in India」という標語のもと、国内の生産力を上げていこうとする政策が実施されている。これにより、製造業などの規模がより大きくなったときには、物流インフラの脆弱性によりその成長が阻まれるリスクもはらむ。
こうした問題は政策によって解決されるべきものから、民間企業がアプローチできるものまで多岐に渡る。前者であれば、都市間の物流を改善すべく高速道路の数を増やしたり、鉄道での物流網を整えるなど。後者であれば、配送計画の効率化、ドライバーの怠惰による配送可能数の低下やそれに伴う配送員の待遇の悪化による悪循環を防ぐことなどが、手立てとして挙げられる。
そうした問題に取り組むベンチャー企業の1つが、インドのバンガロールに本社を置く「Locus(ローカス)」だ。
Locusは主にクラウドとGPSの技術を用い、リアルタイムでトラックなどを追跡できるソフトウェアを提供している。配送会社や配送サービスを必要とする企業が利用している。
Locusを利用することで、上に挙げた配送計画の非効率、ドライバーの怠惰による配送数の増加を解決できる。配送の依頼状況をクラウドで管理し、それとドライバーのGPSを連携させることで、配送計画からトラックの積荷の配置までをも計算し、ユーザーやドライバーに提示してくれる。
GPSを使うことでドライバーのマネジメントがより簡単になり、パフォーマンスが高いドライバーにより多くの仕事を任せられるようシフトを最適化することも可能となる。荷物を受け取る消費者側も、Locusのアプリで配達状況を地図上で確認したり、配送に無駄がないかを把握できる。
サービスはAPI、SDKそしてウェブアプリケーションとして提供されている。
ユーザーは従量課金で基本的な機能を利用できる。追加料金を支払えば、配送状況を分析する機能やアラート通知機能、トラックの最適な積荷の配置方法を教えてもらえる機能なども利用できる。ユーザーはLocusを使って、約10~25%、コストを削減できるという。
現在、約30社に利用されており、Locusを用いた取り引きは少なくとも1日に1万件、多いときで10万件以上にのぼる。また、これまでにインドで勢力的に活動するベンチャーキャピタルの「Blume Ventures」や「Beenext」などから275万ドル(約2億8000万円)の資金を調達している。
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