最近は、レストランやカフェ、駅、空港などでフリーWi-Fiが利用できとても便利だが、誰でも利用できるがゆえに、自分が何をしているか、どんな個人情報をやりとりしているか筒抜けになるリスクがある。
ハッカーにクレジットカード情報やパスワードを盗まれ、身に覚えのない買い物やアカウントのハッキングに頭を悩ませるのは誰にとっても避けたいところだ。では、公共の場でネットを安全に使うにはどうすれば良いだろうか。
そのソリューションとして、オランダの首都アムステルダムに拠点を置くスタートアップが開発したのは、VPN(Virtual Private Network、仮想プライベートネットワーク)を利用したネット接続を安全にする「Keezel」だ。
Keezelは、スマホやPCをVPNサーバを介してネットに接続することで、安全なネット環境を作り出すプロダクトだ。これにより大切な個人情報だけでなく自分のネット上でのやりとりが、ハッカーやインターネットプロバイダ、ネットワーク管理者などからは見えなくなる。
Keezelの特長は以下の通り。
Keezelに接続できるのは、スマホ、タブレット、PCだけでなく、メディアプレイヤーやスマートTVなどWi-Fi機能を持つすべてのデバイス。急増するIoTデバイスにも対応する。
その接続方法はシンプルで、3ステップ。まずはKeezelの電源をオン。Keezelにはボタンは裏側に1つしかないので迷う心配もない。電源がオンになったら、接続したいデバイスのWi-Fi設定画面からKeezelのホットスポットを探し接続する。あとは接続したデバイスのブラウザからKeezelにアクセスし、Keezelをインターネットに接続するだけだ。
これでVPNを利用した安全なネット環境が構築される。特別な設定やインストールなど一切不要なので誰でも簡単に利用できるのがメリットだ。
Keezelはその特長を生かして、ネット上の国境を越える機能を有している。ウェブサイトやコンテンツによっては、アクセス元をIPアドレスで認識し、外国からのアクセスを制限している場合があるが、Keezelの接続国を変更すれば突破できる。たとえば、日本にいながら、米国や欧州など海外のテレビ番組などをネット上で閲覧できるのだ。
Keezelは現在、ウェブサイトから事前注文を受け付けており、発送は12月を予定。購入の際、4つのプランから選ぶことができるが、基本的にはBasicプランとPremiumプランの2つに分かれている。
両プランに共通するのは、複数のデバイスに接続可能なKeezel本体と、256-bit AES(Advanced Encryption Standard)のVPN接続。Premiumプランではこれらに加え、通信速度がHDストリーミングが可能な速さに、また世界160カ国以上、1250以上のVPNサーバへの接続が可能となる。
Basicプランの購入価格は119ドル(約1万3000円)。このプランでは追加料金は一切発生しないが、接続できるVPNサーバ数が限られるほか、通信速度が遅くなるといった制限があるので注意したい。
Premiumプランは、1年(149ドル、約1万6000円)、2年(189ドル、約2万円)、永久にPremium特典を利用できるLifelong(449ドル、約4万7000円)とあり、1年、2年プランはそれぞれ指定された期間内は追加料金なしでPremium特典が利用可能。期間が過ぎると、月額5ドルの利用料を支払うことで、引き続き同じ条件下での利用ができる。
Keezelを開発したのは、スタートアップの「Keezel.com」。2013年に、情報管理とITセキュリティを専門とするAike Muller氏と、ビジネスストラテジストのFriso Schmid氏が創業。Muller氏はコンサルタントとしてネットセキュリティの課題に直面した経験から、Keezelを着想したという。
同社はクラウドファンディングサイト「Indiegogo」でキャンペーンを実施。2015年8月には、目標の540%超に相当する約100万ドル(約1億300万円)の資金調達に成功し、現在Keezelの発送に向けて準備中だ。
Keezelでは今後、Keezelを2台接続することで、オフィスのLANネットワークやホームネットワークに遠隔で接続可能になる機能「Keezel to Keezel」の開発も予定している。実現すれば個人だけでなく、規模の大きい法人での導入も期待される。
(編集協力:岡徳之)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス