パブリッククラウドでERPや会計などの基幹システムを動かす――これまで考えにくかったことが、それほど珍しい事例ではなくなってきている。このようなトレンドを支えているのが、セキュリティだ。前回のセキュリティ要件を受け、今回は固有のセキュリティニーズを満たしながらパブリッククラウドを利用する事例を紹介したい。
生産、販売、会計などの基幹業務パッケージである「J.D.Edwards」をパブリッククラウド上で展開するのが、ERPやビジネスインテリジェンス(BI)の導入支援を行うイデア・コンサルティングだ。拡張性、初期コストを押さえられることなどクラウドのメリットを活用したいというのがパブリッククラウドを導入した理由だが、同社にはもう1つ重要な要件があった――VPN接続だ。
基幹システムであるため、社内LANからVPNで接続する必要がある。幸い、クラウド事業者の多くはVPN接続サービスを提供しており、顧客はパブリッククラウド上に自社が定義する仮想プライベートクラウドを構築し、プライベートIPアドレスの範囲を指定するなどのことが可能だ。
これまで基幹システムというとオンプレミスと考えられていたが、パブリッククラウドのセキュリティ機能を利用すれば、本番環境と同じ構成を一時的に提供することができる。これにより、顧客のサービスを品質と時間などの面で改善できたようだ。
同じくVPNが必須だったというのが日立メディカルコンピュータだ。医療向けシステムを得意とするベンダーで、医療事務や販売会社などが顧客だ。診療報酬と介護報酬は定期的に改訂されており、顧客は同社が用意するポータルサイトを経由して最新のデータをダウンロードする。だがこれは、特定の時期や時間にアクセスが集中するという問題を起こしていた。
このような場合、クラウドの力を借りてシステムを柔軟に拡張することができるが、ポータルサイト上のコンテンツの安全な運用、プライバシー情報を扱うという特性からセキュリティに懸念があった。そこで、クラウド事業者のVPN接続を利用して環境を構築することに。安全性を損なうことなく、ダウンロード速度を改善できたという。
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