セガが狙う“アーケードゲームのためのスマホゲーム戦略”--IPをマルチデバイス展開

 セガ・インタラクティブは10月25日、アーケードゲームのIP(知的財産)をさまざまなデバイスに展開し、そのデバイスに最適化したコンテンツやサービスを提供する「マルチデバイス×ワンサービス」戦略を展開すると発表。その狙いや戦略にそった新規スマホゲームタイトルを発表する説明会を開催した。

  • セガ・インタラクティブ代表取締役社長CEOの杉野行雄氏

 セガ・インタラクティブはセガグループのなかでアミューズメント機器の開発や製造、販売を主力事業として展開している。セガ・インタラクティブ代表取締役社長CEOを務める杉野行雄氏は、アーケードゲーム市場において2006年度には7000億円規模となっていたが、そこをピークに年々減少。データが出ている2014年度には4000億円強の規模となっている。一方ゲームアプリ市場は2015年には9000億円を突破しているというゲーム市場の概況を説明。

ゲーム市場の概況
ゲーム市場の概況

 アーケードゲームにおける多方面に向けた展開に背景には、スマホゲームがゲーム市場の中心になっている現状を踏まえ、アーケードゲームの展開においてIPを軸に顧客接点を拡大し、そこに適したコンテンツサービスを提供することによって顧客体験を充実させていくことが重要だとしている。

 マルチデバイス×ワンサービスのポイントとして「アーケードIP軸での顧客接点の最大化」「新しい連動サービス価値の提供」「ユーザーファーストを実現する開発体制」の3つを挙げた。

「マルチデバイス×ワンサービス」の概要
「マルチデバイス×ワンサービス」の概要

 アーケードゲームのIPをあらゆるデバイスで提供することにより、時間や場所を問わずに楽しんでもらい、ゲームに対する興味や関心を喚起することが狙いのひとつ。すでに同社では、アーケードゲームとモバイルの連動サービスを15年以上継続して運営していることもあり、そのノウハウを最大限に活用。アーケードゲームとスマートフォンゲームアプリとの遊びをリンクさせることで、ゲームセンターへの来店を促進する、新しいO2Oの形が提案できる可能性も秘めているという。

  • 先行事例となる「セガNET麻雀 MJ」

 ひとつのコンテンツをできるだけそのまま直列にリリースする「ワンコンテンツマルチユース」と呼ばれる展開にはせず、デバイスに最適化したコンテンツ作りを行っていくという。また開発には、アーケードゲームと同じ開発チームが中核を担う形を取る。これにより、プレーヤーに受け入れられているゲームのコンセプトや面白さを損なうことなく、マルチデバイスに展開できるという。と同時に、ゲームの世界観などの開発上の構成要素や蓄積した開発資産の活用で、クオリティを保ちつつ開発効率の向上が計れるメリットもあるとしている。

  • セガゲームス取締役 セガネットワークスカンパニーCOOの岩城農氏

 セガグループでスマホゲームを主力としているセガゲームス取締役 セガネットワークスカンパニーCOOの岩城農氏も登壇。スマホゲームの国内市場環境として、売上は右肩上がりで推移しているものの、端末の普及も一巡し、ダウンロード数はすでに頭打ちの状態になっていると説明する。また、ユーザーの可処分時間の取り合いの状況に入っていると分析した。

 市場の成熟しユーザーのニーズが細分化している現状と、多様なニーズや市場環境に適応したコンテンツを提供する開発力やIP展開はセガグループの強みであるとし、「マルチデバイス×ワンサービスは当然の帰結のひとつ」と、戦略の意義を語った。

スマホゲームの国内市場動向
スマホゲームの国内市場動向

 セガ・インタラクティブとしても、これまでスマホゲームのヒット作である「チェインクロニクル」の開発を手がけていることや、先んじて展開した事例である麻雀ゲーム「セガNET麻雀 MJ」が、新規プレーヤーの獲得に貢献するなど好調だったことから、杉野氏はこの戦略に自信を見せている。

  • セガグループとしてのスマホアプリ提供体制。これまでも開発部分は担っていたが、運用面に関してもセガ・インタラクティブが担当していく

 質疑応答の中では、アーケードゲームとスマホゲームの食い合いや、ゲームセンターへ行くことを控えるのではという趣旨の質問もあったが、杉野氏は「そういったことは全くないとは言い切れないが、それ以上の大きいメリットがある。アーケードゲームに興味があっても時間がなかったり、近くに店舗がないというユーザーに、そのゲームの面白さを詰め込んだタイトルを触ってもらえる環境を用意することも、IPを提供する側の責務。スマホ版で遊んだユーザーが、ゲームセンターで遊びたくなると思うような内容にもなっている。あくまでもアーケードに軸足を置くことに変わりはないが、さまざまな形で新しい感動体験を創造していければ」と語った。

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