空き部屋シェアサービスを展開するAirbnbは10月20日、岩手県釜石市と覚書を締結したことを発表した。同市に訪れる国内外の訪問者の観光を促進することで、地域活性化を進める。Airbnbが国内の自治体と提携するのは初めてで、同社から釜石市に提案したという。
釜石市は、鉄と魚とラグビーの街として発展してきた人口3万6000人の自治体。2011年の東日本大震災では大きな被害にあったが、現在は“オープンシティ”というコンセプトのもと、さまざまな企業や人材とのコラボレーションによる、新たな街づくりを進めている。2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップの試合会場地として、国内12都市のうちの1つにも選ばれた。
今回の覚書の締結により、釜石市とAirbnbは、世界191カ国の3万4000都市以上で利用される民泊(ホームシェアリング)プラットフォーム「Airbnb」を通じて、地域経済の復興や観光促進、交流人口の拡大を目指すとしている。
具体的には、釜石市の特色を打ち出すマーケティングキャンペーンを実施するなど、潜在旅行者を釜石市に誘致するために協働する。また、2019年のラグビーワールドカップに向けて、地域内外の観光関係者と提携し、自宅を貸し出すホームステイ提供者にAirbnbに参加してもらうためのトレーニングなどを実施する予定。
同日の調印式で登壇した釜石市長の野田武則氏によれば、現在釜石市で民泊が可能な施設は数軒しかないという。また、ホテルなどの宿泊施設も1000軒ほどしかないことから、ラグビーワールドカップの際には宿泊先不足が懸念されるため、Airbnbと協力して民泊提供者を増やしていきたいと語る。新たに建設されるスタジアムが1万6000人規模であることから、観光客も含めると2~3万人が訪れると予想しているそうだ。
Airbnb共同創設者兼CPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)であるJoe Gebbia氏は、「日本には観光客を惹きつける豊かな文化的遺産が数多くあるが、それ以上にすばらしいのは日本人の温かいホスピタリティやおもてなしだ」と語る。将来的には、災害時に非常用の宿泊施設として、Airbnbのホストが自宅を提供するようなコミュニティも構築していきたいと語った。
当初は、2016年の秋に提出される予定だった民泊新法だが、2017年の通常国会まで見送られることとなった。この点についてGebbia氏は、日本の政府と対話を続けながら、取り組みを進めたいと話す。
また野田市長は、今回の提携で重要なことは、(1)ただの宿泊施設ではなく、ホームステイによって、その土地により愛着を持ってもらえること、(2)災害時などに足りない宿泊施設を補えること、の2点だと説明。「これまであまり考えてこなかった部分。法律よりも中身を大事にしたい」と語った。
Airbnbでは、各国のブランドや団体と連携を進めている。9月にはニュージーランドのオークランドカウンシルと、災害発生時に滞在施設を提供する覚書を締結した。また直近では、台湾の東海岸における観光を活性化させる覚書を同国と交わしたほか、韓国政府とも観光を促進し地方経済を成長させるための覚書を締結している。
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