カップル動画が10代の中で加速している。
「親にカップル動画撮るなとか言われたらどうする?」
「え、マジうざいし。撮らないと(仲間内で)浮くから無理」
「どういう時に撮るの?」
「デートで1日遊んでご飯食べて最後暇だから撮る?みたいな。やることなくなったら撮ってるかな」
「どんなことを撮るの?」
「どこどこに遊びに来ましたとか。ちゅーくらいなら全然オッケー」
ある10代カップルは、カップル動画を日常的に撮っていると答えていた。親もニュースで知って止めたりはしているそうだが、もはや若者世代にとってカップル動画は「暇つぶし」。デートのルーティンメニューに動画撮影が入っているそうだ。
「キス動画を公開すると別れたときに困るのでは」と言うと、彼女は「別れないから大丈夫。あと、万一別れたら新しい恋人と投稿するから平気」と答えていた。彼らにとっては、「激しいイチャイチャはNGだけれど、キス動画くらいならオッケー」と、大人に比べて公開を許容する範囲がかなり広くなっている。
カップル動画で知られるMixChannelは2013年12月にリリースされ、まだできてからわずか3年弱。それでも、元彼氏に「今の彼氏にキス動画をバラす」と脅された女子高生や、「あんたレベルがキス動画公開するなんて」といじめにあった女子中学生もいる。
顔がわかるキス動画を公開すると問題が起きることが大人には予想できても、10代は周囲に公開して幸せをかみしめるため、あるいは今のコミュニティから浮くことを恐れて公開し続けている。
「就活や将来の結婚に影響が出るかも。イチャイチャをSNSで公開した学生が保育専門学校を退学処分になったこともあるし、人事採用担当社が採用を見送った例もある」と伝えたが、「そんなことで採用しないようなつまんないところには入らないからいい」と、まったくピンときていないようだった。公開によって就活の選択肢が狭まることは確かなのだが、保護者世代も「注意しても聞いてくれない」と、対応に苦慮しているようだ。
キス動画やカップル動画は、以前は当たり前のものではなかった。しかし、MixChannelで10代に広く普及したことで、投稿の敷居が一気に下がってしまった。「学校で1人くらいは絶対誰か(カップル動画を)投稿している」と女子高生に聞いたことがある。そのような状態になると、真似して投稿する子が次々と現れるようになる。実際に、その女子高生は「素敵だったから、私も彼氏ができたら投稿したい」と答えていた。
長く取材してきて、10代の意識がすごい勢いで変化しつつあることを感じる。今や、中高生において「顔写真公開は日常」だし、「カップル動画公開も当たり前」なのだ。
しかし、保護者世代は個人情報を安易に公開してないかと言えばそうではない。「キス動画はNGだけれど、子ども写真ならOK」と考える人は多いのだ。たとえば今の時期は、ハッシュタグ「#運動会」が危険だ。
ハッシュタグ「#体育祭」は、中高生の自撮りや体育祭風景を撮影した写真で溢れている。高校生はそもそもスマホが校内持ち込み自由なところが多いし、中学生は持ち込みこそ禁止されているが、こっそり隠れて撮影し、SNSにリアルタイム投稿している。
一方、「#運動会」は子どもの幼稚園や小学校の運動会写真が投稿されることが多い。投稿しているのはほとんどが保護者だ。Instagramで「#運動会」で検索すると、競技中などの子どもの写真が多数見つかる。自分の子どもの顔はもちろん、他の友だちの顔もはっきりと写っているものや、「第◯回大運動会 ☓☓幼稚園」という看板の前などで撮影するなど、園名や校名がわかるものも多数見つかる。
体操服姿なので、フルネームがはっきりわかるゼッケンが写った写真も多数投稿されている。中には名前だけにはモザイクをかけているものもあるが、体操服などを見れば幼稚園や小学校は特定できる状態だ。
そのすべては保護者の手によって投稿されており、「初めての運動会、感動!」「◯◯ちゃん大きくなったね!」など、のんきなコメントがつけられている。顔写真どころか、名前や幼稚園、小学校などが特定されることをまったく考慮していないのだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス