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「ファイナルファンタジー」の生みの親、坂口博信氏が振り返った“クリエーター人生” - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2016年10月11日 13時02分
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プレイステーションを選択した理由と、開発環境が変化していく現実

 順調に人気を上げていったファイナルファンタジーシリーズは、「VII」でプレイステーションに参入。当時はセガサターンとプレイステーションが据え置き型ゲーム機のシェアを争っていたこともあり、両陣営から熱烈なアプローチを受けていたが、最終的にプレイステーションを選択した理由について坂口氏は、「1つでも多くポリゴンの表示できるマシンがいい」と考えていたことが決め手になったと振り返る。そしてこれをきっかけに、プレイステーションは大躍進をとげることとなった。

 このころを振り返る中で、開発環境の変化を強く感じたという。以前は「スタッフ全員が顔見知り」というほど開発チームは小さな状態。開発の最終段階では全員が集まり、明け方にエンディングを見ながら乾杯をして、完成をみんなで喜びあっていた。坂口氏もこういう体験を通じて、ゲーム開発の気持ち良さを心から感じていたという。

 しかしながらシリーズを重ねるにつれ、プロジェクトに関わる人員も増加。そして分業化が進むことによって、誰もが“一部分だけに関わる”状況に変化していった。現在のゲーム開発では珍しいことではないものの、当時はそういう状況に慣れずモチベーションを失ったメンバーも実際にいたことに触れ、ショックを受けたと当時の心境を語った。

 また、一時期スクウェアのゲームタイトルにおける開発費の高騰が指摘された時期があったことについても触れられた。坂口氏は、今でもクリエーターに利益を還元すべきという考え方が根底にあり、「会社が与えられるものはやる気や充実感ではなく、お金と時間(休暇)」と一言。結果的には開発費の高騰につながる形となったが、しっかりとクリエーターに報酬を支払いたかったとしている。

日米の差を感じたことが、映画「ファイナルファンタジー」制作の発端

坂口氏と黒川氏との出会いは、すでに20年以上前からあったようで旧知の仲とのこと。実は坂口氏が黒川氏をスクウェアに誘ったことがあるというエピソードも飛び出した
坂口氏と黒川氏との出会いは、すでに20年以上前からあったようで旧知の仲とのこと。実は坂口氏が黒川氏をスクウェアに誘ったことがあるというエピソードも飛び出した

 2001年に公開された映画「ファイナルファンタジー」についても触れられた。坂口氏自ら監督を務め、当時世界初のフル3DCGで全編が制作された。映画制作に乗り出したきっかけについて坂口氏は、3DCG技術における日米の差を感じたことを理由として挙げた。「ファイナルファンタジーVII」において、日本でも有数の開発者と持てる技術を駆使して作り上げたが、映画「ジュラシックパーク」を見てがくぜんとしたと振り返る。そして、彼らに追いつくには一緒に仕事をすることがいいと考えたことから、ハリウッドのスタッフと手を組んで制作したという。

 興業面では振るわなかったことでも知られているが、内容も賛否があったようで、黒川氏から終盤の展開が急すぎるのでは、という指摘もあった。坂口氏も作り切れなかったという思いもあったが、終わらせることの大切さもあることを強調。ゲーム開発も含めて、プロジェクトが長引くと永久ループのような迷走状態になり、そうなると成果もなにもない危険性をはらんでいるため、プロジェクトを終わらせる方向へ導くことも重要だとした。

 その後、坂口氏は2003年にスクウェアを退社し、ミストウォーカーを設立。もっとも約3年ほど何もしない時期があったという。その間はいい充電期間になったと思いつつも、次第に寂しさと社会貢献できていないうしろめたさを感じるようになり、鳥山氏を起用して「ブルードラゴン」を制作したほか、「スラムダンク」などで知られる井上雄彦氏をキャラクターデザイナーとして起用した「ロストオデッセイ」といったタイトルを手がけた。

最前線に身を置くことで“次が見える”

 スマホゲームの制作にものりだし、「Party Wave」というサーフィンゲームをリリース。もっとも「1日に3ダウンロードしかされないときもあった」というほど大苦戦。坂口氏はこのとき、スマホゲームの市場や開発について不勉強だったことを痛感したと振り返り、研究を行った末にテラバトルを開発した。総ダウンロード数に応じてアーティストの参加や、ゲーム内の新モード追加、コンサート開催、グッズ制作が開始される「ダウンロードスターター」といった取り組みも話題に一役買うこととなり、2014年10月のリリース以降、順調にダウンロード数を重ねて260万ダウンロードを突破するヒット作となっている。

 テラバトルの運営と平行して、告知を兼ねたニコニコ生放送も定期的に配信。坂口氏も自ら“生主”として登場し、ユーザーとのコミュニケーションを図っている。黒川氏が最近関心のあることを質問したところ「ニコニコ生放送」と即答するほどで、実際に放送用の収録スタジオを構えている。そこにはただ楽しいからというだけではなく、ユーザーの性質がゲームを遊ぶという受け身の状態から、現在では自ら発信して楽しむという変化が感じられ、実際にゲームプレイ動画も人気がある。そこに自ら最前線の立場に身を置くことで、次に見えてくるもの、新たな可能性が見えてくるのではないかと考えているとしている。

 坂口氏はゲームクリエーターとしての活動を振り返る中で、ゲーム作りは楽しいと思ってここまで続けてきたが、これまで「何が楽しいか」を考えたことはなかったという。最近になって考えるようになり「世界観を作ることが好き。そこでキャラクターを輝かせることが好き」ということに気付いたと語る。今後については、すでにスマートフォン向けゲームなどのプロジェクトが進行しているようで、「2017年には新作が出せると思う。スマホゲームとは思えないと言われるぐらいにしたい」と抱負を語った。

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