業界に入って今が一番興奮している--水口哲也氏に聞くVRと新作ゲーム「Rez Infinite」 - (page 2)

パーティクルで表現された世界で“音を見る”“色を聴く”というArea XのVR体験

新ステージ「Area X」
新ステージ「Area X」

--Area Xには何かテーマがあるのでしょうか。

水口氏:あります。もともとRezは、受胎をテーマにしています。男性的なものと女性的なものが結合して命が誕生するまでの過程は、記憶にはないけれども人間だれしも経験していることです。それに加え、自分(プレーヤー)がハッカーとなって電脳空間に入り込み、ウイルスを駆逐して世界を浄化するテーマを融合させた世界観になっています。

 Area Xのテーマは“その先”です。何かが誕生していくということと、デジタル世界のシンギュラリティ(技術的特異点)と呼ばれる、2045年くらいにコンピュータが人間の能力を超えるかもしれないという、未来的な予測イメージを掛け合わせています。最後にとあるシーンがありますけど、それが先にあるもののイメージですね。

石原氏:アート面において、Rezはポリゴンライクな空間でしたが、Area Xはパーティクルによって、より繊細な表現と空間作りをすることをコンセプトとしました。エネミー(敵)が出現するときに背景の一部がモーフィングしたり、プレーヤーのショットによってエネミーが崩れるとか、3次元的に空間を生かした演出を取り入れてます。

コンセプトアートをバックに、水口氏とともに語った石原孝士氏(左)
コンセプトアートをバックに、水口氏とともに語った石原孝士氏(左)

水口氏:コンセプトアートを描く段階から、とにかくパーティクルという言葉を伝えました。Rezは点から線になって、それが面になって立体になっていくという「構築されていく」「次元が増えていく」というイメージなんですが、それをバラバラにしてパーティクルが全てを構成する世界にしたいと。

 そして、エネミーを撃ったときにはじけて音と呼応して広がっていく。音楽に反応して色や形状が変化すると、音が見えるような感覚になる。それをVR空間の3Dで見ると、今まで以上の共感覚的な、言葉にできない体験が生み出せるのでは、という推測のもとに描いてもらったんです。

石原氏:今まで以上に光のデザインを意識しているので、光を感じて空間を移動する印象が強く残るかと思います。

水口氏:今まではこういうことをやりたくてもできないということが、デバイスと技術の進化でやっとできるようになったと。“音を見る”とか“色を聴く”という体験は、昔の小さいモニターで伝えるのには限界があったのですが、VRになってようやく伝えられるようになりました。

--アート面で苦労したところはありますか。

石原氏:Rezらしさは残しつつ進化形にするというスタンスのなかで、いざ点で世界を表現するというときに、装飾をせずシンプルに魅力的な世界にするということに苦労しました。初期のころはモノクロで空間を感じるようにデザインを進めて、その設計ができたうえで、色や演出をつけていきました。なので、モノクロタッチで、しかも点でしっかりと印象に残るデザインを表現することには時間がかかりました。

--ちなみに、水口さんが石原さんをアートディレクターとして起用した理由はあるのでしょうか。

水口氏:彼は高校時代にRezを遊んで、それに魅了されてゲーム業界に入ったんです。child of edenのコンセプトアートをお願いする段階で複数人の候補がいたんですけど、彼はのべ2000枚ぐらい描き続けたんです。自分で言うのもなんですけど、かなり理不尽なオーダーをしたにもかかわらず、最後までついてきてくれて。それからはあまり細かく話す必要がなく、オーダーに対して的確なデザインをあげてくれる人間です。音楽面でも彼と同じ世代の人がRezのチームに入っています。彼らが新しいものを生み出すというのは、魂のリレーができているようでうれしいですね。

--やりたいことはたくさんあるとのことですが、今後の展望などがあれば教えてください。

水口氏:エンハンス・ゲームズとしては、VRの未来に向けてやれることを追求していくスタンスです。とにかくアイデアが止まらないんですよ。それを全部実現しようと思うと5年や10年でも足りないぐらいかかりそうですけど、今これだけワクワクできるのだから、ずっとモチベーション高く精力的に取り組むことができるのかなと。

 この先、さらなる技術進化によって4Kや8Kの片目ディスプレイというのも実現するでしょう。人間の目は8K以上になると視認できないと思うので、ハードの進化はそこで止まると思いますが、きっと創造力やイマジネーションで世界がもっと広がっていきます。片目8Kになると現実と同じぐらいの解像度で見えますし、そこには10年かからず到達するかと。VRだけではなく、ARやMRも装着型デバイスとして出てくると思うので。それを考えるだけでもワクワクしっぱなしですね。「おーっ」という感じですよ(笑)。

 ゲームのクリエイションは、映画と近しいところがあると考えています。経験や体験によって高まれば高まるほどもっといいものが作れると思っているので。若いときだからこそ出せる勢いや味もありますけど、年齢を重ねるほどいいものができると思っています。あと20年ぐらいはやりますよ。表に出るのは新しい才能を持った人たちでいいんで、裏方にまわってもいいからいろんなことをやって、新しい体験を生み出し続けたいですね。

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