電力線を使った通信規格「HD-PLC」の今--IoT時代見据え独自の進化へ

加納恵 (編集部)2016年09月30日 07時30分
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 パナソニックは9月29日、電力線を使った通信規格「HD-PLC」の技術説明会を実施した。BtoB市場を中心に利用されている現状や、8K映像の伝送ができる新規格「HD-PLC Quatro Core」などについて話した。

 HD-PLCは、2006年に日本国内での規制緩和に伴い導入された通信規格。電力線を通信回線として利用し、電力とデータを一緒に伝送できることが特長だ。コンセントなど既存のインフラを利用でき、導入しやすいというメリットも持つ。

HD-PLC開発とこれまでの取り組み背景
HD-PLC開発とこれまでの取り組み背景

 当初は家庭用の通信規格として、BtoC市場向けに展開していたが、Wi-Fiの普及を受け、PLCは停滞している状況。一方で、通信性能の大幅な向上や、接続台数を増やせる「マルチホップ機能」の開発により、オフィスビルなどBtoB市場での普及が進みつつあるという。

パナソニックPLC事業推進室室長の荒巻道昌氏
パナソニックPLC事業推進室室長の荒巻道昌氏

 パナソニックPLC事業推進室室長の荒巻道昌氏は、電力とデータの2つの伝送ができる機能性を、パナソニックの創業者である松下幸之助氏が発明した「電灯と家電用ソケット」の2つを利用できる「二股ソケットと同じコンセプト」と説明する。

 HD-PLC製品は、2006年の第1世代以降、2008年に第2世代、2013年には第3世代を発表。国際標準規格にも認定され、着実に普及の足掛かりを築いている。

 宅内利用において、ノイズの影響や接続の不安定さがデメリットとされていたが、電力線の状態に合わせる「伝送路推定技術」の開発により、通信性能を向上。最大128個までの制限があった接続数も、マルチホップ機能により最大1000個にまで拡張できるなど、BtoB、BtoGでの利用に合った進化を遂げている。

「マルチホップ機能」の概要
「マルチホップ機能」の概要

 電力線だけでなく、同軸線、ツイストペア線、電話線なども使用できるため、既設線を有効活用できることもPLCならでは。その特徴をいかし、エレベーター内の照明、サイネージ案内表示、監視カメラ、制御、緊急用電話などを配置するときでも、配線がシンプルになり、軽量化も実現。メンテナンス時間の削減にも役立つという。

 今後は、監視用カメラやエネルギーマネジメントなどの用途に注目が集まっている。セキュリティカメラ用同軸LANコンバータで活用ができ、最大2kmまでの使用が可能。DC電源供給とともに映像通信も実現する。

HD-PLCの活用例
HD-PLCの活用例。「PLC内蔵炎センサー」と「PLC内蔵コントローラー」により、炎を感知するとLED誘導手すりが点灯する

 パナソニックがHD-PLCで見据えるのは、IoT機器への展開だ。2020年に500億個ともいわれるIoT機器で、電力とデータを同時に扱うPLCは、効率よく電力消費を制御できるシステムとして最適だ。

 「IoT機器と通信方式の考え方は、スマートフォンやカメラなどのモバイル機器は、バッテリで給電しながら使用する無線通信、冷蔵庫や洗濯機など据え置き型の機器は、常にコンセントに接続しているためHD-PLCを使用すると、安定性、コスト、利便性の面からポイントになるだろう」と荒巻氏は分析する。

 同日には、8K映像が伝送でき、最大速度1Gbpsまでの高速モデムを実現するHD-PLC Quatro Coreを発表。2分の1倍モード、4分の1倍モードを使用すれば、通信距離を従来の1.5~2倍に伸ばせるなど、高速化、長距離化を実現した。リリースは10月1日。通信の広域化、省線化、無線連家により、IoT時代の重要技術として取り組んでいく。

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