NTTドコモは9月21日、新潟市、ベジタリア、自律制御システム研究所(ACSL)、エアロセンスとともに、ドローンを活用した水稲のモニタリングや栽培管理、海岸保安林のマツ枯れ対策や維持管理の手法開発を目的とした実証プロジェクトを、国家戦略特区である新潟市で実施することを発表した。
ドコモは2015年5月から、農業IoT事業を展開するベジタリアとともに、新潟市で水田センサやクラウド型水田管理システムを導入した実証を開始。全国の農業普及組織と連携し、検証をしてきた。具体的には、新潟市内の460ヘクタール(東京ドーム約100個分)の水田に、300個以上のセンサを設置して、水位や湿度をクラウドで管理し、スマートフォンで遠隔確認できるようにするなどしてきたという。
また、4月からは水稲向け水管理支援システム「PaddyWatch(パディウォッチ)」を全国の稲作農業生産者向けに販売している。さらに、6月末にはベジタリアに出資し、両者の事業拡大のために資本・業務提携したことを発表していた。
今回の「水稲プロジェクト」では、ドコモ、新潟市、ベジタリア、そして自動制御型ロボットシステムの研究開発や製造販売をするACSLが連携。水稲の病害虫の発生状況の監視や収穫時期の予測を目的に、ドローンを活用して、米の品質向上や収穫量の増加に取り組む。
稲に発生して米の味を落とす「いもち病」などの病害虫の発生や、収穫時期の把握については、これまで目視や水管理システムのPaddyWatchなどのセンサを活用して対応してきた。新たにドローンに搭載した高精細カメラで上空からも水田の状況を把握し、その空撮画像を分析することで、より精度の高い収穫予測が期待できるとしている。
ベジタリア代表取締役社長の小池聡氏は、新潟市では農地が“飛び地”になっていることから、移動時間に多くの時間を割いている生産者が少なくないと説明。今後は既存のセンサによる“虫の目”に加えて、ドローンによる“鳥の目”を活用することで、よりきめ細かいリスク管理を可能にし、生産者の労力を減らしたいとしている。
「海岸保安林プロジェクト」は、ドコモ、新潟市、ベジタリア、エアロセンスの4者が、ドローンを活用して、松くい虫による“マツ枯れ”被害の防止に取り組む。エアロセンスは、ソニーモバイルコミュニケーションズとZMPの合弁会社で、ドローンによる空撮測量サービスを展開しており、土木測量や農林業のモニタリングなどに活用されているという。
新潟市には、海岸沿いに国内最大級の砂丘列がある。海岸保安林は、こうした砂丘の砂や、海からの風や塩、高波から、沿岸部に暮らす人々や、田畑を守るために、江戸時代から植林されてきた。しかし、小池氏によれば、松くい虫(マツノマダラカミキリ)によって、毎年約50万㎡のマツ枯れ被害にあっており、1979年と比べて松の木の数が4分の1まで減少している深刻な状況なのだという。
これまでは、作業員が目視で被害状況を1本ずつ確認して、感染した木を伐倒駆除していたため時間と労力がかかっていた。そこで同プロジェクトでは、ドローンに搭載したカメラからの空撮画像の分析結果と、GPSによる位置情報を活用して、より的確に被害木を特定できるようにする。また、空撮画像を立体視して、被害木の高さを測定する取り組みも予定しているという。
ドコモは、この2つのプロジェクトにおいて、ディープラーニングを活用した画像分析技術を提供する。ドローンからの撮影データと、地上でのセンサや人手によって収集するデータを組み合わせ、ビッグデータとして分析することで、より精度の高い情報を抽出し、同実証プロジェクトに役立てるとしている。
新潟市長の篠田昭氏は、「農業戦略特区が呼び水になって、さまざまな企業が新潟をフィールドに活躍いただいている。(今回のプロジェクトは)その発展形だと考えている。新潟市のポテンシャルを最大限に引き出すものであり、これまでの水稲の栽培管理や、海岸保安林の維持管理の手法を大きく変えていく可能性を秘めたプロジェクトだ」と期待を寄せた。
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