ファーウェイ、産業界のニーズを網羅する31の新サービス--時代は「Cloud 2.0」へ

「HUAWEI CONNECT 2016」では、クラウドに向けたファーウェイの意志が鮮明になった
「HUAWEI CONNECT 2016」では、クラウドに向けたファーウェイの意志が鮮明になった

 8月31日から9月2日にかけて、中国のテクノロジ企業ファーウェイが、エンタープライズ向けイベント「HUAWEI CONNECT 2016」を上海で開催した。1社によるイベントとしては同地域でも類を見ない、同社最大規模となるものだ。

 同イベントでは連日多数のキーノートスピーチが行われたが、ここでは新たに発表された31のサービスを含むIaaS「FusionCloud」の概要と、ファーウェイのCEOが語った内容を紹介する。

10のカテゴリをカバーするIaaS「Fusion Cloud」

ファーウェイ IT Product Line プレジデント Zheng Yelai氏
ファーウェイ IT Product Line プレジデント Zheng Yelai氏

 ファーウェイのIT Product LineプレジデントであるZheng Yelai氏は、2日目のキーノートセッションで登壇し、同社が提供するIaaS「FusionCloud」において、あらゆるビジネス、産業で必要とされる機能を網羅する31のサービスの追加を発表した。

 この31のサービスは、コンピューティング、ネットワーク、ストレージ、データベース、セキュリティ、マネージメント&デプロイ、エンタープライズアプリケーション、アプリケーションサービス、データ分析、クラウド開発という10のカテゴリに及ぶもので、同氏は「企業向けのクラウドアーキテクチャーをより進化させる」ものだと胸を張った。

「FusionCloud」に含まれる新たな31のサービス
「FusionCloud」に含まれる新たな31のサービス

 効率が大きく向上した仮想GPU処理を提供するほか、オンメモリデータベースのSAP HANA Clusterは7Tバイトもの大容量を確保でき、多次元データ分析のOLAPにおいてはSpark SQLと比較して5倍の速度を実現する。データベースのロスはなく、パフォーマンスも大幅に向上したと説明しており、中国・大連市の企業に試験導入した際には、ワンストップのテストソリューションが大きな効果を上げ、研究開発の効率が10倍ほど向上したという。

  • FusionCloudでは従来もしくは他のシステムと比べ、大きなパフォーマンスを発揮することも特徴

  • FusionStorage 6.0はブロック・ファイル・オブジェクトストレージをサポート

  • 大規模システムに余裕で対応するキャパシティをもつ

 また同氏は、最大4096ノードまで対応するOpenStack互換のクラウドストレージサービス「FusionStorage 6.0」も発表した。分散型のブロックストレージ、ファイルストレージ、オブジェクトストレージを含み、ブロックストレージでは45万台の仮想マシンの運用を、ファイルストレージでは1億3000万のモバイルユーザーの収容を、オブジェクトストレージでは1億5000万のセンサのデータ収集をそれぞれカバー可能だとした。

クラウドを雨にすること、潤してくれることが最重要

 同社が、いわばAmazon Web Servicesを思わせるこのようなサービス群を提供する背景には、「2025年、エンタープライズアプリケーションの85%はクラウド上で運用されることになる」という同社の予測がある。

 ところが、企業が提供するサービスに必要な機能はそれぞれで異なる。従来型の(クラウドではない)システムも大量に残されているが、「これを見捨てることはできない」のが実情だ。ファーウェイはこうした企業のあらゆるニーズを満たし、従来型のシステムをクラウドに移行しやすくする、新たな「統合API、統合アーキテクチャー、統合エコシステム」を構築する必要があると判断したわけだ。

ファーウェイ 輪番CEOのKen Hu氏
ファーウェイ 輪番CEOのKen Hu氏

 同じくキーノートスピーチを行ったファーウェイ 輪番CEOのKen Hu氏の言葉からも、そのような動き、つまりビジネス、産業の幅広い分野を網羅していく同社の狙いがはっきりと見える。同社はこれまでエンタープライズ向けには主にハードウェアとネットワーク、同社の言葉に言い換えれば「デバイスとパイプ」の敷衍に力を注いできた。今後はこれに「クラウド」がもう1つの柱として加わることになる。

ファーウェイのエンタープライズ事業は、デバイス、パイプ、そしてクラウドの3本柱となる
ファーウェイのエンタープライズ事業は、デバイス、パイプ、そしてクラウドの3本柱となる

 クラウドは同氏いわく、「すべてのインテリジェントの源」になるもの。“インテリジェント”の代表格と言えるであろうビッグデータや人工知能といった技術も、実質的にはクラウドサービスそのものだからだ。同社はその来たるべき“インテリジェントな世界”の「後押し役になりたい」とする。「インフラにフォーカス当てて革新的なクラウド技術を提供し、顧客と一緒にクラウドのエコシステムの構築に積極的に関わる」ことを目指す。

 「単なる技術よりも大きな価値をもたらすことになる」と同氏が話す統合的なクラウドのあり方、ビジネスの再構築を促し、コスト削減だけでなくビジネスに新しい価値を生み出すクラウドを、同社は「Cloud 2.0」と定義する。そして、Cloud 2.0の時代になると「Industry Cloud」、すなわち産業界が主役になるだろうと見る。

時代はCloud 2.0へ
時代はCloud 2.0へ

 Ken Hu氏は「各業界、各企業がそれぞれの業務に合ったクラウドソリューションを模索している」と話す。それに呼応するのがZheng Yelai氏の発表したFusionCloudの新たな31のサービスであり、FusionStorageをはじめとする同社の各種ソフトウェアプラットフォームであると見ているのだろう。

 しかし、Ken Hu氏は、クラウドはあくまでも手段であり目的ではないと自戒する。「クラウドは重要だ。ただそれよりも、この雲を雨にすること、サービス、業務に価値をもたらして、潤してくれることがもっと重要だ」と述べ、その道程を新疆ウイグル自治区の5000~6000メートル級の山々へ続く険しい道に例えた。

Cloud 2.0の成功に向けた道程を、三蔵法師がたどったとされる新疆ウイグル自治区にある険しい道に例えた
Cloud 2.0の成功に向けた道程を、三蔵法師がたどったとされる新疆ウイグル自治区にある険しい道に例えた

 「すべての成功は一歩一歩確実に、堅実に歩むことによってできたもの。クラウドへの道も決してたやすい道ではないが、我々は確実に一歩ずつ歩んでいかなければならない」(Hu氏)。

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