大手ガス会社の日本瓦斯(ニチガス)とメタップスは9月7日、エネルギー小売事業に人工知能(AI)を活用する取り組み「スマートエネルギー革命」を発表した。これにあわせて、ニチガスはメタップスに出資する。出資額は非公開。
提携の第1弾として、自動応答するチャットボット「LINE BOT」によるガス器具の販売を9月から始める。顧客はLINEのチャットボットを通じて、ファンヒーターなどの器具を注文し、決済情報を入力することで、スマートフォンのみで注文から決済まで完結できる。決済にはメタップスが提供する決済サービス「SPIKE」や子会社ペイデザインの技術を活用するという。
また、スマートフォンに特化したメタップスのUI/UX設計のノウハウを活用して、ニチガスの基幹業務クラウドシステム「雲の宇宙船」の会員や決済情報をより管理しやすくする。顧客向けには、スマートフォンでガス使用料を確認したり、口座振替登録をできるようにすることでペーパーレスを実現し、浮いたコストを料金に還元するほか、より便利にガス料金を支払えるようにする。
さらに、為替や気温、収益実績などエネルギー業界のさまざまな指標と、メタップスのAI技術を組み合わせることで、ニチガスの経営分析をし、より迅速な意思決定を支援する。具体的には、経験や勘ではなく、データにもとづいて、収益予測や計画との乖離の把握、ガス料金の設定などをできるようにするという。
ニチガスグループは、1955年にLPガスの販売を始め、1966年に都市ガスに進出。さらに2014年には電力の販売を開始している。現在、117万件(LPガス:77万件、都市ガス:40万件)の顧客を抱える業界4位の総合ガス会社で、関東圏を中心にシェアを獲得しているという。
ニチガスは10年以上前からICT化の取り組みを進めており、特に力を入れているのが同社が開発したエネルギー業界向けの基幹業務クラウドシステムである雲の宇宙船だ。同システムによって、営業やコールセンター、経理や人事、工事、配送などのデータを一元管理しているほか、現場作業の95%をモバイルで完結できているという。
業界内では、ICT化が進んでいる企業といえるニチガスだが、2017年4月から都市ガスの小売り事業が全面自由化することを受け、より先進的なサービスを提供することで、競合他社と差別化を図りたい考えだ。そこで、AIなどの技術を提供する企業を数社、比較検討した結果、メタップスが最良のパートナだと判断したそうだ。
ニチガス代表取締役社長の和田眞治氏は、「クラウドシステムで当社のビッグデータを集計する仕組みはできあがっている。そこにメタップスのビッグデータ分析や人工知能とBOTを加えることで、私たちがいままで『こうできないかな』『こうあればいいな』と思っていたことが、やっと実現できる」と喜びを語る。
一方のメタップスは、これまでAIを使って広告(アプリ収益化支援)や金融(決済)などの領域で事業展開しており、市場規模の大きいエネルギー領域への進出を狙っていたことから、両者の思惑が一致し提携に至ったという。また、メタップス代表取締役の佐藤航陽氏は、公共料金の支払いについてはオンライン化が遅れていることから、ニチガスの決済処理を同社が担える点にも大きな意味があると語った。
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