クラウドソーシングサービス「シュフティ」の運営やクラウドワーカーを活用したCGS(Crowd Generated Service)の開発などを手掛けるうるるは9月6日、空き家の所有者に向けた情報提供や専門家とのマッチング支援などをするポータルサイト「空き家手帳Web」を公開した。
空き家手帳Webは、2013年の総務省統計で約820万戸、2033年には2000万戸を超える見込み(野村総研試算)と言われている戸建て住宅の空き家問題に焦点を当て、その課題解決を目的として開設されたポータルサイトだという。
具体的には、空き家を所有しているものの放置してしまっている人や、どうやって空き家を処分・活用すればいいのか分からない人などを対象に、基礎知識から空き家を放置することによるリスクまで、幅広い情報を提供。また、空き家に関する悩みを投稿して専門家からの回答を得ることができる公開型のQ&Aコンテンツ「空き家相談ボード」や、不動産会社、リフォーム業者、フィナンシャルプランナーなど、空き家にまつわる専門家を検索して問合せできるコンテンツも用意する。
サービスの背景にあるのは、空き家をめぐるさまざまな問題の深刻化と、空き家が持つ市場潜在力の高さだ。発表会で登壇した、うるる代表取締役の星知也氏によると、空き家を放置することで、火災、倒壊、治安悪化、景観悪化、不動産価値の低下など多くのリスクがある一方で、約7割の所有者は空き家に対して「何もしていない」という実態があるそうだ。
人口の減少、少子高齢化、新築住宅依存などを背景に、空き家は今後も増え続け、そのリスクも高まることが懸念されている。しかし、国や自治体は空き家の処分・活用に関する法整備などを進めているが、課題解決に結びついていない現状があるという。
その一方で、購入補助制度の整備や、Airbnbに代表される民泊の盛り上がりなどを背景に、中古住宅の活用は徐々に進んできており市場規模は拡大。戸建て空き家の流通、リフォーム、建替え、解体・撤去、賃貸などの市場規模は、2013年で合計9兆円ほどとなっており、うるるの試算によると2033年には22兆円規模にまで拡大する可能性があるのだという。
こうした現状を鑑みて、空き家所有者に対して正しい知識と想定されるリスクを啓蒙し、適切な処分・活用を促すことが、「空き家手帳Web」の狙いだ。クラウドソーシングによって収集した空き家情報をデータベース化して、不動産業者などに提供する「空き家活用ポータル」を運営してきた同社は、空き家を所有する人向けの基礎知識の啓蒙を目的としたフリーペーパー「空き家手帳」を2016年3月に発行。「空き家手帳Web」は、こうした啓蒙活動を一度で終わらせることなく継続的に行っていくことを目的に開設されたのだという。
「空き家所有者は、放置するリスクや活用方法を知らないため、特に困っていない。こうしたニーズが顕在化していない状態では、空き家所有者を動かすこと=空き家問題を解決することはできない。継続的に啓蒙を続けることが必要だ」(星氏)。
星氏によると、フリーペーパー版「空き家手帳」を発行した際には、空き家所有者だけでなく、行政機関や不動産会社からも問合せがあるなど、多くの反響を得られたという。その反響からは、不動産やリフォームの事業者は空き家所有者を探していること、ニーズがはっきりしている空き家所有者はさまざまな悩みを持っており相談できる場を必要としていること、空き家問題の解決には不動産業者だけでなく、さまざまな業態の事業者を必要としていることなどの仮説が浮上したという。
この仮説を検証するために、同社が実施した調査においても、空き家の処分・活用に対して「関心があるが、よくわからない」「意識はあっても行動に移せない」「誰に相談すればいいのかわかならい」といった声が多く聞かれたそうだ。そのため、空き家問題の解決にはこうした所有者が抱える課題を解決できるサービスが必要だと考えたという。「空き家問題に対して誰も解決策が出せていない中で、このサービスがこの社会問題の解決に貢献できれば」(星氏)。
同社によると、「空き家手帳Web」は事業者向けには有料で提供し、「空き家相談ボード」への回答と自社のPRができるプロフィールページを開設できる法人ビジネス会員は月額5000円、「空き家相談ボード」へ回答する専門家などを対象とした個人ビジネス会員は月額500円で提供する。サービス初年度で、登録事業者数500社、Q&Aコンテンツの投稿数3000件を目指すとしている。
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