毎年台湾で開催される世界最大規模のコンピューター見本市COMPUTEX。2016年はベンチャー企業向けの展示エリア「InnoVEX」が新設されたことも話題を集めた。台湾のベンチャー事情はどのようになっているのか、台北市内にあるインキュベーションセンターと、ユニークな製品で日本への進出を目指す、ベンチャー企業を取材した。
TSMC、デルタ電子、Quanta Computerといった、台湾を代表するIT起業や大手銀行がスポンサーに名を連ねる、インキュベーションセンター「Garage+」があるのは、台湾のダウンタウンにある雑居ビルの9階と10階だ。9階はこれから起業としようという人達のための支援施設、コワーキングスペースとなっていて、1人につき月額3000台湾ドル(日本円で約1万円)で、ミーティングルームを含め、スペースを自由に利用できる。
センター主催のイベントにも参加可能で、「企業経営に必要な財務、労務、法律などの各種セミナーにも参加できるほか、スポンサー向けに投資家向けにアピールできるイベントもある」と、同センターマネージャーのジェイソン・ルー氏。
つい先日も日本のクラウドファンディング「Makuake」を運営する、サイバーエージェント・クラウドファンディング代表の中山亮太郎氏をゲストに招き、イベントを開催したばかりだという。
10階はスタートアップのためのスペースとなっており、原則的には起業後1年間、ここにオフィスを構え、スポンサー探しやメンターからの支援を受けることができる。
家賃は部屋の大きさによっても異なるが、ジェイソン氏によれば最も大きな部屋でも日本円で10万円程度。現在もバイオテクノロジからICT、ロボット、電気自動車の開発を手がける会社まで、さまざまなスタートアップ企業が入居中だ。
この10階のオフィスを巣立った企業のひとつに、台湾大学の研究室から起業した、チェンミン・リン氏とチャンユー・チェン氏が共同経営する、AIDMICS Biotechnologys社がある。AIDは「助ける」、MICSは「顕微鏡(microscope)」を略したもので、顕微鏡で多くの人を助けたいとの思いが込められているという。
同社が手がけているのは、その名前にもある顕微鏡。といっても高価で使用するのに専門知識が必要な電子顕微鏡ではなく、スマートフォンやタブレットのカメラを利用した、誰もが使いこなせる顕微鏡だ。現在、畜産業者向けの「iSperm」と、医療・教育機関向けの「μHandy」という2つの製品を展開している。
iSpermはその名の通り、家畜の精液を検査し、濃度や活動率を簡単に分析できるキット。タブレットのカメラを利用する顕微鏡と、解析用のアプリケーションがセットになっている。現在提供されているのは豚用のものだが、リン氏によれば「他の家畜や人間にも応用可能」という。
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