スマートフォンを中心に、オムニチャネルやIoTなどの次世代テクノロジを通じて生み出されるデジタルマーケティング戦略。そこにはアイデアやクリエイティビティが不可欠だが、それだけでは「これまでになかった体験」を提供することはできない。ユーザーに新たなエクスペリエンスを届けるために、欠かせない普遍性や本質とは何か。
この連載では、デジタルを活用したコミュニケーション施策を発信する「コードアワード」に寄せられた作品から、デジタルマーケティングの「未来」を拓く“ヒント”をお届けする。
「コードアワード2016」において「グッド・ユース・オブ・メディア」に輝いた、久原本家グループ本社による「くばら あごだしチャレンジ」。施策のタイトルにある「あごだし」とは、「トビウオから採れるダシ」のことだ。
そのトビウオが400mの跳躍をすることにかけ、スマートフォンのみで閲覧できる「400m分のスクロール画面」を制作。最後までスクロールできた人のみ、5万円が当たるキャンペーンに応募できるという施策を実施したが、スクロールしきるのにかかる時間は、30~40分。その“苦行”とも言える大胆な試みが、大きな話題となった。
しかし、突き抜けたアイデアは、企業イメージを左右することもある。そんなリスクをともないながら大胆な施策を実施し、話題性、数値ともに成功を遂げた秘訣について、施策の責任者である久原本家グループ本社の齊藤珠美氏、プランニングを担当した電通九州の毛利慶吾氏に聞いた。(聞き手はD2Cソリューションズ プランナー日山雄貴氏)
齊藤氏:私たちは福岡を本拠地とする会社で、九州エリアではテレビCMも打っています。少しずつ認知度が上がっているのを感じますが、全国的な知名度と言えば、まだまだ。
商品は全国で販売しており、東京にオフィスも構えていますが、全国区や首都圏でCMを打つだけの予算はありません。各地の営業部隊の皆さんを後押しするような具体策が、ほとんど何もないような状態でした。そこで限られたリソースの中、ウェブの拡散力、クチコミの力で何かできないかと考えたのが企画のきっかけです。
齊藤氏:「ウェブで拡散されるような、話題性のある何か」と言うくらいで、本当にぼんやりとした要望でしたね。プランナーさん泣かせの典型だったと思います(笑)。
しかし、全国的な知名度が低い中、いきなり商品を売り込むようなPRは難しい。そこで今後、シリーズ化の方針が立っていた「あごだし」関連の商品にスポットを当てながら、まずは「くばら」というブランド名を覚えていただこうという、明確な狙いはありました。
齊藤氏:最初にこの企画をご提案いただいた時の率直な感想は、面白いが6割、不安が4割でした。ただ、この不安は、ポジティブな不安だと思ったんです。
どうして不安に思うのか、それは今までに見たことのない企画だから。逆に10割安心できる企画には、既視感があると思うのです。すでに誰かがやっていて、ある程度の成功が保証されているから安心できる。裏を返せば、まだ見ぬ不安も含め、とても可能性のあるアイデアだと感じました。
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