IBMは、脳のように機能するコンピュータチップを開発した。今度はサムスンが、それを使って生物学に着想を得たデジタルの眼を開発した。
IBMのチップ「TrueNorth」は、4096個の極小コンピューティングコアで構築されており、それが約100万個のデジタルな脳細胞と2億5600万個のシナプスを形成する。この両者で脳のニューロンのような役割を果たし、相互に短いメッセージを送り合ってデータを処理する。
ニューロモーフィック(神経形態学的)コンピューティングと呼ばれるこの構造は、定められた規則どおりに並んだ命令で記述されたソフトウェアを実行する従来型チップからの劇的な脱却となる。ニューロモーフィックチップはまた、従来のチップほど多くの電力を消費せずに大量の処理を実行できるように最適化されている。
サムスンはTrueNorthを利用して、従来のデジタルカメラとはまったく異なる方法でビデオ映像を処理する「Dynamic Vision Sensor」を開発した。
Samsung Advanced Institute of Technologyでリサーチ担当バイスプレジデントを務めるEric Ryu氏によると、「個々のピクセルは独立して動作」し、見ているものが変化したことを報告する必要がある場合にのみ知らせるという。同氏は米国時間8月11日、サンノゼ郊外にあるIBM Almaden研究所の30周年を記念して開催されたIBM Researchのイベントで話をした。
これによって実現するのが、起こっていることを2000fpsという驚異的なフレームレートで撮影できるカメラだ。普通のデジタルカメラは通常、120fpsで限界に達する。それより高速な撮影が可能になると、3Dマップの作成、自動運転車の安全機能、ジェスチャーを認識する新しい形のリモコンなどに有用だ。
Ryu氏によると、TrueNorthをベースとするサムスンのシステムは効率的で、消費電力は約300mWだという。これは、ノートPC向けプロセッサのおよそ100分の1、携帯電話向けプロセッサの10分の1だ。同氏は、これに対して人間の脳はコンピュータの1億分の1の電力でタスクをこなすことができるとして、次のように語った。
「生物学と現代のシリコン技術の間には大きなギャップがある」
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