スタートアップ企業が資金調達などを目的に利用することが多いとされるクラウドファンディングだが、この7月「Makuake」に登場したのは、オーディオ&ビジュアルメーカーの老舗、JVCケンウッドの「マルチライブモニターイヤホン」だった。
これまでエポックな商品を数多く生み出してきたJVCケンウッドが、なぜ今までとは異なる商品化に挑むのか、“モノづくり”の間口を大きく広げたクラウドファンディングは、大手メーカーのモノづくりさえも変えていくのか。JVCケンウッドでMakuakeのプロジェクト開始に携わった、メディア事業推進統括部新規事業推進室長の江島健二氏、同シニアスペシャリストの鯨岡伸二氏、メディア事業部プロダクツ事業統括部マーケティング1部 企画G グループ長の斉藤靖之氏に話を聞いた。
江島氏 マルチライブモニターイヤホンは、今までにないコンセプトと機能を持った商品です。イヤホンは遮音性を重視し、1人の世界で音楽を楽しむのが従来のコンセプト。しかし、マルチライブモニターイヤホンは外の音を取り込むことで、音楽とミックスしたり、楽器を弾いたりして楽しむがことができます。
新提案商品としてこれまでにないコンセプトが市場に受け入れられるか否かを、お客様の声をもっとダイレクトに聞きたい、と考えたのが発端でした。
江島氏 SNSをはじめユーザーの環境は変わってきています。もっとダイレクトにやりとりをしたり、反応をみたりするには、私たちが今までやってきたマーケティングの延長線ではなく、全く新しい形で取り組む必要がありました。
鯨岡氏 今まで実施してきたグループインタビューなどからは出てこない意見がほしかったんです。実際Makuakeのプロジェクトページでは音も聞けないですし、周囲音を取り込む新機能も文字やイメージでしか伝えられない。満足の行く情報を提供できているわけではありません。それでも、まずそこにどのようなニーズがあるのか、本当に知りたいのはそこでした。
江島氏 私たちは音楽を1人で練習するためのイヤホンとして打ち出していますが、家事と音楽を両立させるためや、駅のアナウンスを聞き逃さないなど日常生活のなかで使いたいという声をいただいています。また音の大きな工具を扱う木工作業をするときに音楽も聞けて、作業にも危険がないという思いもしなかった意見もいただきました。
斉藤氏 周囲音を取り込んで楽しめるイヤホンにどんな可能性があるのか見極めたいという気持ちも強かったですね。私自身、プロトタイプを見たときに「欲しい、使ってみたい」と思いましたが、音楽を1人で練習するためのイヤホンがどこまで受け入れられるか、一方、楽器練習用、家事用と幅広い使い方が考えられるため、ターゲットがあいまいになってしまわないか、などの懸念事項もありました。
実際見ていると、使い方を提案いただける一方、楽器用途という明確な特長を打ち出すことで、わかりやすくなったように感じましたし、コンセプトはこれでよいと確信しました。
鯨岡氏 あと、カラーバリエーションに関しては、予想外の結果が得られました。マルチライブモニターイヤホンは、STUDIO BLACK、INDIGO BLUE、VINTAGE BROWNの3色を用意していますが、今までの感覚からすると結果的にSTUDIO BLACKの数量が一番出るだろうと思っていたんですが、現時点ではINDIGO BLUE、VINTAGE BROWNの人気が高いですね。
カラーリングは楽器をイメージしてデザインしたので、その辺りも楽器使いのイヤホンに振った効果が現れていると感じました。社内で聞いた意見とは結果が全く異なったのが面白いですね。ヘッドホンは無難な黒のイメージが強い商品ですが、コンセプトにあった色が売れることがはっきり分かりましたし、切り口によって受け入れられ方がだいぶ違うことを確信できました。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス