たとえば、アニメグッズなどのホビー商品、特に日本国内でも予約しなければ手に入らないような希少性の高い商品に対する需要は非常に高いです。「Japanese Animation」という分野は、eBayマーケットプレイスでもひとつのジャンルとして確立している状況です。
日本では人気がひと段落しているけれど、海外では今まさに人気が過熱しているコンテンツでグッズが流通していないケースや、「ドラゴンボール」「ポケモン」など人気アニメのコンテンツは流通しているけれど日本でしか手に入らないグッズがあるケースなど、アニメやキャラクター関連商品に対する海外の需要は非常に大きくなっています。日本の“クールジャパン”政策も追い風になり、この部分は今後爆発的に伸びる分野なのではないでしょうか。
為替変動があるため一概に言えませんが、定価よりも高値で売れる商品はあります。希少性の高いものに高い価値を見出すというのは日本も海外も同じだと思います。海外については、“日本限定”というロイヤリティがついているものであれば、さらに価値が高まるケースもあります。
他にはない唯一無二の価値を持つ商品を作っているメーカーや、海外では手に入らない商品をセレクトしている小売事業者にとって、越境ECは大きなビジネスチャンスになるのではないかと思います。米国で開かれた社内イベントでユーザーに意見を聞いたところ、その人は釣りが趣味で「釣り具は絶対に日本からしか買わない」と言うのです。
米国内で手に入らないものは、高価であっても、届くのに時間がかかっても日本から買う。そして購入後の満足度も高く、リピーターが生まれています。日本の商品を必要としているコアなユーザーの層は着実に形成されているのではないかと思います。
インバウンドの大きな波は、どの企業にとっても大きな力にしたいと考えていると思います。訪日外国人によるインバウンド消費は、2020年までは確実に右肩上がりで伸びていくはず。多くの外国人観光客が日本に足を運び、店舗で買い物をしてもらい、そこで日本の接客やカスタマーサービスのレベルの高さを実体験していただくことで、日本のショッピング環境に対する信頼は大きく高まるのではないかと思います。お金をかけてマーケティングしても絶対に手に入らない環境が2020年までに整うわけです。
そして、ご指摘の通り、都心に生まれる外国人観光客のトラフィックをどのように地方に分散させるかというのは、地方にとっては大きな関心なのではないかと思います。体験型ツーリズムなどは、日本人よりも先に外国人がキャッチアップして、インターネットを通じて急速に流通していくわけで、それが地方にとっては大きな力になるのです。
こうしたインバウンド消費をめぐる昨今の動きは、越境ECにとっても非常に強い追い風だと考えています。日本に来た方が日本を好きになって、帰国してからも日本の商品に興味を持ってくだされば、そこに越境ECのビジネスチャンスが生まれるわけです。ここ4~5年で越境ECをめぐる環境が一気に整い、ビジネスが活性化するのではないかと期待しています。
日本国内ではあまり知られていないけれど、海外では熱心な愛用者が多いという製品はありますよね。eBayマーケットプレイスでも、2011年の東日本大震災の際には日本製品の売上がものすごく伸びたのですが、その理由は「震災によって、もう日本製品が買えなくなってしまうかもしれない」という危機感によるものだったのです。それだけ、日本の製品に対する信頼や品質に対する期待は高いといえると思います。
これはイーベイだけの課題ではありませんが、最近中国、韓国の電化製品の品質が非常に高まってきていて、コストパフォーマンスも良く、日本製品にとっては強力なライバルになってきています。品質という付加価値によって高額でも売れる商品を作ってきた日本企業に習ってきているわけですね。その中において、日本の企業はもう一度「細かいところまで徹底的に品質を追求する」「何が付加価値になるのかを考える」という原点に立ち返って市場に挑戦している状況です。
ただ、こうした日本企業が緻密なモノづくりを海外にマーケティングするとなると、まだまだ手が行き届いていない部分が多い。そこをどこまでしっかりとサポートし、興味関心を持つ顧客にリーチできる手段を確保できるか、新規顧客を開拓できるかが、イーベイ・ジャパンにとっての大きなチャレンジになると考えています。
今後も、米国、英国、ドイツ、オーストラリアなど、重点地域の市場ニーズの提供などを通じて、日本企業向けに日本語でeBayでのビジネスをサポートしていきたいと考えています。また、昨今の“越境ECブーム”で増加している、ロジスティックやシステムベンダーなど、越境ECの周辺ビジネスを展開する企業とも連携しながら、販売事業者へのリーチ拡大や越境ECによる販売事業者への負担を軽減するためのサポート拡充を推進していきたいと思います。
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