米eBay(イーベイ)が日本で海外進出支援(越境EC)に力を入れている。日本国内から海外への販路を求める企業を主要ターゲットとして、日本法人であるイーベイ・ジャパンが顧客の拡大に取り組んでいる。顧客はイーベイ・ジャパンのサポートを得て、米国や欧州各国などのイーベイのプラットフォームを通じて商品を海外に販売する。
イーベイはもともとオンラインオークションサイトとして、米国から日本に進出した。Yahoo!オークション(現ヤフオク!)との競争の末、2002年にこの分野からの撤退を余儀なくされたが、世界で順調に成長してきた。
現在は常時8億品以上が出品されている。それらの8割以上が固定価格であり、オークションサイトというよりも「マーケットプレイス」として、世界約190の国と地域で展開中だ。約2500万のセラー(出品者)に対して約1億5700万人のバイヤー(商品購入者)がおり、取引額は約833億ドル(約9兆8000億円。1ドル=118円の計算)にのぼる。そして、全体の約20%の売上が越境ECにより計上されているという。
日本から多く出品され、売れているものは、中古ブランド品などのファッション製品やジュエリー、時計、カメラなど。ゲームも人気で、中古ゲーム販売店で100円、200円で売られているような昔のカセットのニーズが高いという。
イーベイ・ジャパンを引っ張るのは、EC大手のアマゾンと楽天を経験してきた佐藤丈彦氏だ。越境ECを手掛けるのは今回が初めてとのことだが、「これまでの経験から、国内の事業者の課題は理解している」と“その道のプロ”としての自信を見せる。国内での今後の戦略や、越境ECのコツを聞いた。
――アマゾンや楽天、Yahoo!ショッピングの存在感が際立っている日本で、イーベイはあまり目立っていない。今後どう認知度を高めるのか。
認知度が低い要因は、現在、国内ECを手掛けていないことが大きい。イーベイをご存知だったとしても、もう日本から完全に撤退したと思っている方も多い。今後、メディアを通して、ビジネスの状況を伝えていきたい。また現在、パートナーを介して出品者をサポートしているが、その連携をさらに強めていく必要があると感じている。
越境ECに関して、イーベイ“だけ”を使ってくれというスタンスではない。国内ECもそうだが、複数のチャネルにさまざまな顧客がついている。他社のサービスを使って越境ECを始めてもらうのでも構わない。ただ最終的には、イーベイもチャネルの1つに入れていただき、世界にいる1億5700万人のお客さまに商品を販売していただきたい。
――出品者の目標獲得数は。
日本にいて海外にモノを販売したいと思っている方を、すべて取り込みたい。オークション方式の割合が減ったとはいえ売り上げ自体は大きいため、個人の方にも利用していただきたい。越境ECは国内でECを展開することに比べるとハードルは高いが、やりたい方がいれば積極的に支援していく。
現在のように円安が続いている時がチャンス。円高になる前に、新規の出品者を増やしていきたい。
――出品者にどうのように訴求しているのか。
たとえば、日本郵便と連携して全国各地で越境ECに関するセミナーを開いたり、国内のECサイトに出品している方に、商材を見た上で、イーベイに出店してもらえるようお声掛けをしている。
先ほども話したが、2015年から強化しなければならないのは、やはり認知度を上げること。まずはそこだと実感している。
――国内企業は越境ECに注目しているか。
興味をお持ちになっている方が多くいる。ただ、言語の問題などハードルが高く、現状、どこのプラットフォームも「これをやれば簡単に出品できる」といった状態ではない。そのため、越境ECに踏み切れていない企業も多い。
言語の壁は、さまざまなベンダーと提携しながら少しずつ取り除いている。自動翻訳に人による翻訳を加えて、出品者がコミュニケーションをとれるようにするなどしている。
いま皆さまにお伝えしているのは、とにかく中長期で腰を据えてビジネスをしてください、ということ。「国内のECで売れているから、このまま海外へのチャネルを増やして国内と同じように展開すればいい」と思っている方は大体失敗する。
数年前に国内でECを始めたのと同じように、まずはマーケットを勉強して、各国の買い手の傾向などをつかめるよう知見をためてほしいと伝えている。
――越境ECを検討している人々にメッセージを。
(身振り手振りを交えて)「今でしょ!」とは言いたくないが、本当に今やるべきだと思う。円安ドル高の現在は、世界の競合企業との対決で有利。マージンが高く、価格でも他国の出品者に勝ちやすくなっている。今こそ、国内ECのチャネルに加えて、越境ECのチャネルを作るべきだ。これだけは本当に知っていただきたい。
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