事件後、犯人がネットやSNSに書き込んでいた内容が話題となることがある。事件を匂わせていたり事件に至る心情などが垣間見えることがあるためだが、それだけでなく「犯行予告」をしている場合もある。
2008年6月8日、秋葉原通り魔事件が起きたときのことを覚えている人は多いだろう。犯人は携帯サイトの掲示板に依存しており、次第に殺人予告を書き込むようになっていた。事件当日も、「秋葉原で人を殺します」というタイトルで、「車でつっこんで、車が使えなくなったらナイフを使います みんなさようなら」と犯行予告を書き込んでいた。
当時の増田総務相がこれを問題視し、「ネット上の犯罪予告を検知するソフトを開発する。費用は数億円かかる」としたことに対し、矢野さとる氏が急きょ翌日に作り上げたのが犯行予告の収集・通報サイト「予告.in」だ。
同サイトは、2ちゃんねるや掲示板などから犯行予告と思われる書き込みを自動取得してトップページに掲載する仕組み。当時、犯行予告が相次ぎ、ニュースを騒がせていたことは記憶に新しい。
たとえば2008年2月には、「埼玉の小学校の女子を2月29日13時に殺す」と掲示板に書き込んだ千葉県の10歳の女子小学生が、補導されるなどしている。女児は「おもしろ半分でやった。大騒ぎになり反省している」と答えている。
最近は2ちゃんねるなどへの犯行予告の書き込みはかなり少なくなったようで、新しい犯行予告はほとんど「予告.in」に掲載されていない。では犯行予告がなくなったのかと言えばそのようなことはなく、10代の子たちは場をSNSに変えて投稿している。犯行予告の実態とどのような罪に当たるかについて見ていこう。
「スワッティング」とは、嘘の緊急を要する事件を通報して、警察やSWAT部隊を出動させる行為のこと。2015年5月、40件以上のスワッティング容疑をかけられていたブリティッシュコロンビア州の17歳の少年が、そのうち23件を全面的に認めて逮捕された。
少年がターゲットにしていたのは、主に女性のオンラインゲームプレイヤー。オンラインゲーム「League og Legends」で出会った女性プレイヤーにフレンド申請を送り、断ったプレイヤーの個人情報をネットに公開したり、嘘の通報で被害者宅に警察を出動させたりしていたのだ。通報内容は、「殺人を犯した」「ナパーム弾を持って家族を人質に立てこもっている」などが多かった。
少年は、2014年12月に逮捕される数日前に、8時間に及ぶライブストリーミング配信を行い、過去に起こしたスワッティングについて放送していたほか、Twitterでも自分が犯した事件について報道した記事を投稿して自慢していたという。ネットに記録が残ることなど意に介さず、自慢したい、認められたいという気持ちが暴走した状態となっていたわけだ。
ここまで過激ではないが、認められたい気持ちが上滑りして犯行予告を投稿する例は日本でも後を絶たない。2014年7月、私立高校2年生男子(16)は、「本日15時に岐阜駅にある爆弾が爆発するように仕掛けました」などとツイートし、偽計業務妨害の疑いで書類送検されている。生徒は、「Twitterで有名になりたかった。フォロワーを増やしたかった」と理由を語っている。
2013年5月には、名古屋市の高校2年生男子(16)と長野県の中学3年生男子(14)が、「明日の10時に通り魔おこします!!時間通りになるか分からないから警察も大変になるよ」とTwitterに書き込み、威力業務妨害容疑で書類送検されている。高校生徒の方が先に書き込み、中学生徒の方が直後に同じ文面で投稿していた。
理由はやはり、「有名になって優越感に浸りたかった」というものだった。10代の若者たちが犯行予告を投稿する背景には、このように「フォロワーを増やしたい」「有名になりたい」という理由が多いのが特徴だ。
10代の子たちはまだ何者でもないが、承認欲求は強いため、認めてもらいたいために過激な行動に出ることがある。女子の場合は、顔を出したり露出を増やしたりすれば異性にちやほやされることは難しくない。一方、男子は普通にしていては注目されないため、行動が過激化する傾向にある。気持ちが先走り、このように違法行為に及ぶことも珍しくない状態だ。
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