オランダで日系企業の進出を支えるシステム開発ベンチャー「クリエイトエントランス」 - (page 2)

オランダの商習慣、転職活動のハードルは?

――そうした経験を踏まえ、オランダの商習慣について何かアドバイスはありますか。

 オランダでは「残業」のハードルが高いです。残業すると、会社はその時間帯、従業員に対して通常の1.5~2倍の報酬を支払わなければなりません。また、「ワークシェアリング」も浸透しており、夫婦でそれぞれ週3日ずつ働き、学校の送り迎えなど子どもの世話は分担している家庭も多い。

 たまに日本に一時帰国すると、多くの人が「仕事があるから家族を守れるんだ」と思って働いている印象を受けますが、こちらの人びとは「仕事は自分たちが幸せになるための手段」と、仕事とプライベートの順番を逆に考えていると感じます。とはいえ、日本人が海外で発揮できる強みの一つはやはり「勤勉さ」ですので、一長一短だとは思いますが。

――こちらに進出するIT関連企業が知っておくべき情報はありますか。

 クリエイティブな企業に関わる優遇措置というものがあります。既存の市場にないものを生み出す企業に対して、法人税や給与に対する所得税が一部免除されるのです。過去にはスターバックスやアップルが、オランダに拠点を構えて事業を展開することで節税を狙っていると、「ダッチサンドイッチ」と批判されたこともありますが。

 この措置なども含め、オランダは欧州の中でも法人税率は低く設定されていますが、一方で個人の所得税は高いです。また、日本よりも会社の必要経費として認められる基準が厳しかったりもします。このあたりにオランダ政府の巧さを感じますし、進出する企業は知っておいたほうがよいでしょう。

藤村篤司氏

――オランダでのIT関連企業への転職の状況はいかがでしょうか。

 この10月から、日本人は企業に就職する場合、労働ビザを取得しなければならなくなる可能性があります。これまでは長期滞在許可さえ認められればよかったため、企業も日本人を採用しやすかった。労働ビザが必要となると、必然的に求職者に求められるスキルレベルも高くなるでしょう。

 転職のハードルが比較的低い選択肢としては、日本人が経営する企業であったり、旅行予約オンラインサイトなど大手グローバル企業の日本人窓口担当など、日本人であることが強みになる職種が考えられます。いずれにせよ、ビジネスレベルの英語スキルは必須です。オランダはIT関連企業も多いですから、英語での情報収集ができれば機会はあると思います。

自らの経験を後に続く日系企業に還元したい

――今後の展望を聞かせてください。

 弊社はシステム開発のほかに、メディア事業も展開しています。オランダへの進出を検討している人向けの情報サイト「オランダ起業サポート 」、こちらで生活する日本人ためのお役立ちサイト「オランダ生活 」など。「オランダ生活」は、起業した当時の弊社にとって名刺代わりとなるようなサイトとして立ち上げた経緯もあります。

 こうしたメディア事業もそうですが、今後はシステム開発だけでなく、日系企業の進出を支援するウェブサービスの開発にも注力しようと考えています。海外で開発したシステムやこれまで50人以上の就労ビザを取得してきたノウハウ、それに「つぶれかけた経験」もありますから、それらを今後進出する日本人の方々に還元したい。具体的には、多言語対応可能なレストランや宿泊施設の予約システム、企業の従業員の勤怠管理システムなどを開発中です。

 日本には地方の中小企業も含め、素晴らしい製品をもつ企業や優秀な人材がたくさんいますし、海外進出も頑張っておられます。そういった企業や人たちにどんどん海外に出てきてもらって、世界に向けて日本の素晴らしい文化を広げていってもらいたいです。弊社もさらなる成長や新しいサービスを構築し、ベンチャー企業として突き進んでいきたいと思います。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]