ノイズキャンセリングヘッドホンとして長く市場をリードし続けている、ボーズの「QuietComfort」が、2016年にワイヤレス化という大きな進化を遂げた。
従来機同様の高音質再生、装着感、サイズ感をそのままに、ワイヤレスモデルとしての使いやすさを追求した新モデル「QuietComfort 35」。9月にはネックバンド部分にバッテリと電気系統を収納したインイヤータイプの「QuietControl 30」も発売する。
「ボーズの中で2番目か3番目にノイズキャンセリング技術に取り組んだ」という大ベテラン、headphone Lead Research EngineerのDan Gauger(ダン・ゲイジャー)氏に聞く、ボーズのQuietComfortが、このタイミングでワイヤレス化した理由。
素晴らしい理論だと思いました。今まで頭の中で想像するだけだった抽象的な機能が、製品となって現れる、実際に音にできることを大変美しいと感じました。
ノイズキャンセリング機能自体は、現在、多くの製品に使用されていますが、ボーズは快適、楽などの意味を持つ「Comfort」をブランド名に含んでいる通り、ヘッドホンを装着すること自体が居心地の良いものであるように常に心がけています。ですから重量、圧迫感、感触といった部分にもこだわりました。
また低域、中域、高域とすべての周波数帯域で、ノイズキャンセリングをバランス良く提供することで自然な静寂感を日常の中に採り入れることができます。以上の2点はボーズだけの特徴だと思います。
重視したのは、今まで提供してきたQuietComfortのコアなメリットは妥協しないことです。ノイズキャンセリングの性能はもちろんですが、装着感や高音質といった部分を譲ることはできません。
バッテリやワイヤレステクノロジを搭載するスペースを確保するため、ほとんどのパーツは再設計しましたし、内部の配置もかなり変えています。
特にQuietControl 30は、ネックバンド部分にバッテリとワイヤレステクノロジを搭載しており、各パーツの小型化にはかなり苦労しました。ただそれ以上に「コントローラブル・ノイズキャンセレーション(可変ノイズキャンセリング)」をスムーズに実現する部分が大変でした。
以前はQuietComfort 3とイヤホンの2つを持ち歩き、集中したいときはQuietComfort 3、音楽をBGM的に楽しみたい時はイヤホンと使い分けていました。しかしQuietControl 30の登場によって、2つを持ち歩く必要がなくなりました。個人的にも大好きなヘッドホンです。
多くの人はQuietControl 30を、音楽を聞いたり、通話したりするために使用すると思いますが、私はノイズキャンセリング機能そのものを非常に楽しんで使っています。
例えばカフェに入って、ノイズキャンセリングをオンにすれば、カフェにいる雰囲気はそのままに、周りの喧騒だけを遠ざけられます。お気に入りのカフェで、自分のスペースをいつでも確保できる。そうした使い方をしています。
私自身せっかちな性格なので、できるだけ早く発売したいと思っていました(笑)。ただBluetoothとボーズのノイズキャンセリング技術を組み合わせるための検討に時間がかかりました。
もちろん2つのパフォーマンスは一切妥協はできませんし、何も犠牲にせず、ノイズキャンセリングとワイヤレスを実現しなければなりません。何年も前から取り組んでいましたが、ようやく発売できることになりました。
ある論文では、世界のノイズレベルは10年ごとに1デシベルずつ上がっているとのことです。その中において大事なのは、ノイズによってどんな影響があるかを理解できるようになったことだと思います。
ノイズがどれだけのストレスを人体に与えるのか、思考力や集中力にはどんな影響がおよぶのか。それを理解した上でノイズをコントロールすることはますます重要なテクノロジになってくると言えるでしょう。
これだけ人気が出て驚いています(笑)。という思いもありますが、別の意味ではノイズキャンセリングにできることはまだあると感じています。ヘッドホンのワイヤレス化は急速に進み、バッテリ内蔵モデルは拡大していますが、そのすべてにノイズキャンセリングが内蔵されているわけではありません。もっと多くの人に広げていける技術、それがノイズキャンセリングだと思っています。
例えば、外に出て眩しければ目を細められますし、見たくないものを目の前にした時はまぶたを閉じられます。視覚はこんな風に自分でコントロールできますが、聴覚は、そういうわけにはいきません。しかしノイズキャンセリングヘッドホンを装着すれば、コントロール能力を身につけることができます。
上手に使うことで、人間としての感覚も自らがコントロールできる。そうした新たな感覚をぜひみなさんにも体感してほしいと思います。
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