ソニー、エレキ復活で「ラストワンインチ」の存在へ--ロボット再参入も

加納恵 (編集部)2016年06月29日 17時02分
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コンシューマエレクトロニクス分野復活、全事業で黒字化へ

 ソニーは6月29日、2016年度経営方針説明会を開催し、代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏が、中期経営計画の2年目にあたる進捗と2018年以降の取り組みについて説明した。

 平井氏は「営業利益、純利益ともに大幅な改善ができた。利益創出と成長への投資をテーマとして第二次中期計画の初年度という意味では総じて良いスタートができたと考えている」と2015年度を振り返った。

代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏
代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏
  • テレビ事業、モバイル・コミュニケーション分野は大幅に損益を改善した

 なかでも長く低迷の続いたコンシューマエレクトロニクス事業については「収益改善の最大の要因」と位置づけ、この事業の復活を宣言。10年間赤字が続いたテレビ事業や、2014年度に大きな減損を計上したモバイル事業などを含め、2016年度はすべての事業で黒字化を達成する見込みだという。

 平井氏は「いたずらに規模の拡大を目指すのではなく、差異化と収益性を重視する方針はグループ全体に浸透してきている。ソニーは再び成長に向けた歩みをはじめた」とし、第2次中期経営計画の最終年度となる2017年度の経営数値目標をROE10%以上、営業利益5000億円以上と発表。「ソニーの歴史において5000億円以上の営業利益を計上したのは、1997年度に一度だけ。これは20年ぶり2回目の挑戦になる」とした。

  • 2015年度連結業績

  • 2016年度連結業績見通し

  • 連結営業利益の推移(1963年度~)

 ソニーの成長を牽引するドライバに位置づけるのは、「ゲーム&ネットワークサービス分野」「エンタテインメント分野」「デバイス分野」「金融分野」の4つ。

 「PlayStation 4」が世界累計実売台数4000万台を突破し、好調に推移するゲーム部門は、ネットワーク事業の売上が前年比約5割の伸びを記録。10月に発売を控える「PlayStation VR」は、「未知の領域を含むインターフェースだが、将来的にはゲームのみならずソニーグループが持つカメラや撮影技術、コンテンツ制作力など、豊富なエンターテインメント資産をフルに活かせる領域と捉えている。グループが一体となって取り組むことで、新たな事業ドメインに育てていける可能性がある」と意欲を見せた。

  • ゲーム&ネットワークサービス分野

  • ネットワーク事業の成長

 映画、音楽などを持つエンタテインメント部門は、「デジタル化の進展、ストリーミングサービスの優勢により産業構造自体が変化しており、コンテンツへのニーズの高まりと多様化が生じている」と現状を分析。定額制配信サービスの普及に関しては「テレビコンテンツをイッキ見する人が増加しており、質の高いドラマへのニーズは明らかに高まる。ソニーでは『ブレイキング・バッド』『ベター・コール・ソウル』など大ヒット作を次々生み出しているテレビ番組制作部門を有しており、これは大きな強み。音楽分野については、有料ストリーミングサービスの立ち上がりにより、音楽市場の縮小がようやく底を打ち、反転の兆しを見せている」と、強みが活かせるジャンルであることを強調した。

 一方、スマートフォン販売の影響を受け、業績見通しを大幅に下方修正したデバイス分野では、イメージセンサの売上減速を「重く受け止めている」としながら、「スマートフォン市場の成長が鈍化してもトレンドとして複眼化や高画素化などの高まりが期待されている」と新たな用途を模索。監視カメラやFA、ドローン、車載など、将来への研究開発投資を積極的に行っていると話した。

 生命保険、損害保険、銀行と着実に業務拡大を実現している金融分野については、超低金利環境により収益面では厳しい状況にあると説明。ただし、「お客様と直接つながるビジネスであり、質の高いコンサルティングを有する優位性は変わっていない」とし、今後高品質かつ利便性の高いサービスを提供することで中長期的な利益成長を目指す、とした。

ソニーはお客様にとって「ラストワンインチ」の存在になる

 平井氏は「構造改革をやりきった先」として今後のソニーについて、「エレクトロニクス、エンタテインメント、金融の3つの事業領域を柱として進化させることで成長を目指す」と発表した。

 エレクトロニクスに関しては「もはや大きな成長は期待できない、高度にネットワーク化した時代ではハードはコモディティ化すると言われるが、ハードに求められる機能は変わっても、お客様との接点の重要性は変わらない。お客様に最も近いところで感性に訴える商品を開発し、届ける。そこにソニーの強みがある」と言い切る。

 「通信インフラの世界でラストワンマイルの戦いとかつてよく言われたが、ソニーはお客様にとって『ラストワンインチ』の存在でありたい。その存在であり続けるために、感動の追求と事業と収益の持続的な成長を実現する『リカーリング型ビジネス』を追求する」と、新たな指標を示した。

 今後はリカーリング型ビジネスを軸に、新たな事業を作り上げていくとのこと。すでに「Life Space UX」や新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」(SAP)なども実施している。加えて、映像、音響、技術、センサ、メカトロニクスなどの技術にAI、ロボティクス、通信などを組み合わせ、新しい提案をしていくという。

 ロボットに関しては「お客様と心のつながりを育て、喜び、愛情の対象になりうるようなロボットもある。単にAIが組み込まれた商品を出すのではなく、お客様に感動体験をもたらすハードとサービスを組み合わせた、新たな事業モデルを提案していきたい」と、その内容の一部を紹介した。

 これら新規事業創出に必要な技術と人材については「積極的に投資していく」とし、5月に発表した米国AI開発ベンチャー「Cogital」への業務提携や、7月に設立するコーポレートベンチャーキャピタル「Sony Innovation Fund」などにも取り組んでいく。「こうした取り組みを通して将来を担うソニーの人材育成にもつなげていく」という。

 5月7日に創立70周年を迎えたソニー。平井氏は「新たな挑戦を加速すべき時期がきたと感じている。類まれなる創業者が築いたソニーを唯一無二の企業体として進化させ、次世代につなげることが経営陣の使命だと肝に銘じている。ソニーの高収益企業への変革と新しい事業創造に向け、果敢に挑戦していく」と今後の姿勢を示した。

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