他の東南アジアの国々と同様、マレーシアで外食は珍しいものではない。屋台であれば300円も出せば一食済ませられるので、ほとんど自炊しない家庭も多く、「フードデリバリー」の利用も増えている。域内でスマホ普及率が高いこともその背景にある。
2015年10月、これまでありそうでなかった新しいタイプのフードデリバリーサービスが登場した。その名も「Yumcious」。これまでのフードデリバリーと大きく違うのは、料理の提供者だ。レストランやファストフードなどの店舗ではなく、一般家庭の台所で作られた「家庭の味」が届けられるのだ。
注文方法はいたって簡単。Yumciousのウェブサイトでログインした後、そこに表示された料理を選んで、配達日や地域を指定して購入するだけ。現時点ではクアラルンプール近郊のランチタイムの配達(11時~13時)のみで、前日までに注文する必要があるが、6月から始まった断食月にはディナーの提供が始まった。
最低注文金額はRM15(約390円)、サービス料金は購入金額によって最大15%、配達料金は各ショップごとRM4(約100円)かかるが、近々改定され下がる予定だ。
サイトを実際に操作してみると、単純でわかりやすいが、正直なところまだ不完全な印象を受ける。選べるメニューも少ないし、デリバリーエリアも限定的で、前日までの注文というのもやや面倒だ。この新しいサービスへの需要はどういったところにあるのだろうか。
そこで、サービスを運営するYumcious Technologiesの共同創設者 兼 CEOであるElyas Zabidi氏に直接聞いた。Elyas氏によれば、Yumciousの役割は、主婦など料理が得意な「料理パートナー」「グルメな人々」、そして「配達業者」を結びつけるプラットフォームで、やがてはお互いに料理を注文し合うような、コミュニティマーケットプレイスを目指しているのだという。
Yumcious Technologiesは、Elyas氏を含むIT業界出身の3人によって創設された。友人だった3人がYumciousのビジネスアイデアを思いついたきっかけは、ともすればありがちな会話からだった。知人が料理を作って販売していたが、家庭の事情で家を空けられなくなり商売を続けられなくなったという。家の台所で作ったものをデリバリーしてくれるサービスがあったら、家にいながら働けるし、家庭料理が食べたい人もたくさんいるのではないか――。
かくして、Yumciousが誕生した。実は、現在の状態は、まだニーズを探るべくテスト的に開設したMVP(Minimum Viable Product)、つまり実行可能な最小限のサイトだという。ところが市場の反応は驚くほど早く、スタートするや否や注文が殺到。サイトの登録者数は現時点で1500人以上、コンバ―ション率、リピート率ともに高いそうだ。
現在、同社のチームスタッフはたったの8人。需要にとても追いついていない状況で、まだ広告活動もできていないというから、いかに潜在的ニーズが高いかが伺える。資金提供してくれるパートナーを募集中で、資金が集まり次第、順次サービスの対応地域を拡大し、同時に広告活動にも力を入れていく予定だ。
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