「日本の家電市場では、レンジ、シェーバー、ルームエアコン、ドライヤーと多くの商品で、金額シェア1、2位を獲得。セグメントを分けつつ価値を伝える力と、製版連結でむだのない日本における勝ちパターンを海外へも展開する」――パナソニックアプライアンス社社長の本間哲朗氏は、2018年に向けての取り組みをこう説明した。
白物家電やオーディオ&ビジュアル商品などを持つアプライアンス社の2015年度売上高は前年同期比2%減の2兆5048億円、営業利益は同1.3倍の678億円で、減収増益。テレビの販売減を白物家電の増販でカバーできず減収となったが、高付加価値商品を打ち出す「プレミアム戦略」が奏功したことと、テレビの黒字化により増益となった。
長く低迷していたテレビ事業は、2016年3月期で8期ぶりの黒字化を達成。欧州では初の有機ELテレビ「CZ950」も発売した。5月にはテレビ向け液晶パネルの生産終了がアナウンスされたが「液晶パネルの生産は、以前から産業用に変更していくとしており、その時期がきたというだけ。液晶テレビ事業への影響は全くない」と言い切る。
ただし「テレビ事業はアジア、欧州、中南米と地域を絞って展開をしていく。これを再度地域を膨らませていくことは考えていない。以前はプラズマ、液晶とセットもデバイスもフル展開での戦略をとってきたが、それでは収益を確保できなくなった。OEMやODMでテレビを作り、販売だけを追いかける経営判断はしない」と市場の見方は慎重だ。有機ELテレビについても、他社製パネルを採用し「画質を作り込んで製品に仕上げてきた、決して一朝一夕にできたものではない」と、開発生産工程は今までのテレビとは異なる。
一方で、白物家電については「2015年度は家電合計の占有率が過去30年間で最高を記録。11の事業部すべてで黒字化するなど、この業界で1つのグローバルスタンダードになったと感じている」と自信を見せる。
その原動力の1つが「Jコンセプト」「ふだんプレミアム」などのプレミアム戦略だ。「買っていただけるような提案ができるかどうかが重要。例えばドライヤーは1〜2万円の高価格製品でもパナソニックの提案が受けいれられている。プレミアム戦略を推進する一方では、エントリー向け商品を絞るなどの選択も同時にやっている」とする。
今後は海外市場向けにもプレミアム戦略を推し進める。それがアジア市場向けのエアコン「SKY」シリーズと、中国向けの冷蔵庫だ。「SKYシリーズは輻射冷却方式を採用し、冷えすぎを防ぐ機能を持つ。日本より先にこの春アジアで発売を開始した。一方、冷蔵庫は幅90cmで620リットル超の大容量タイプ。『超乾燥』ができる乾燥庫を設けていることが特徴で、中国特有の高級干物などが保存できる。富裕層向けに8月から発売する」と意欲的だ。
日本市場とは異なるプレミアム商品展開を海外で発売することについては「日本で受け入れられた商品を日本以外の国に提案していくのが基本だったが、それがこの10年で通用しなくなった。アジアも中国も独自の価値観が芽生えている。そこに対応しきれず信頼を失っていたのが最近の状況。直近3年は、中国やアジアに開発拠点を構えてゼロから見つめなおし、その市場に合った製品を提案してきている」と市場の変化を説明する。
冷蔵庫1つとっても日本では省エネが評価されるが、中国ではWi-Fiをつけてスマートフォンから操作できることが好まれるとのこと。「日本の冷蔵庫にWi-Fiをつけて日本のユーザーが喜ぶかといったらそうではない。喜んでいただけるところにあった技術を提案する。白物家電はその国の文化に直結した商品。文化にあった商品を出していきたい」という。
パナソニックアプライアンス社の2016年度経営目標は、売上高で前年度比4%増の2兆6000億円、営業利益で同1.8倍の1000億円。コンシューマー商品のプレミアム化を推進するほか、2015年12月に買収した米ハスマンの新規連結による増収増益を見込む。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」