2020年の東京オリンピック、パラリンピックを控え、日本を訪れる年間の外国人観光客数は2015年に2000万人を突破。2020年には4000万人が訪日するとも言われ、拡大を続けている。しかし、外国人観光客が感じる大きなストレスの1つに“言葉”の問題があり、屈指の人気観光地である京都においても、その不満は根強い。
今回、ヤマハが京都府商工労働観光部、京都市産業観光局、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)とともに実証実験をする「京都 Sound UD プロジェクト」は、外国人観光客の言葉に対するストレスを軽減させる新たな取り組み。利用できる場所もデパートからショッピングセンター、鉄道、バス、観光地と“面”で展開できることがポイントだ。
京都 Sound UD プロジェクトは、ヤマハが提供する新技術「おもてなしガイド」を用いて、訪日外国人を言葉の面からサポートするというもの。対応スポットでアナウンスが流れているときに、「音声内容を取得」ボタンを押すと、アナウンスの内容を文字で表示できるアプリだ。音声認識技術の一部や、音声の波形データを利用することで、音声を文字化でき、インターネットへの接続も不要。聴覚障害者や訪日外国人向けの新たな音声ガイドとして期待されている。
京都 Sound UD プロジェクトでは、日本語、英語、中国語(簡、繁)、韓国語、タイ語、フランス語、スペイン語の8カ国語に対応。JR西日本伊勢丹、イオンモール、高島屋、京都駅ビル、錦市場商店街などの商業施設、阪急電鉄、京阪電気鉄道、京福電気鉄道、近畿日本鉄道、京都市交通局、京阪バスなどの乗り物、東映太秦映画村、京都府立植物園などの観光地、旅行会社のエイチ・アイ・エスなどで、順次サービスを開始する予定で、対応スポットはさらに拡大する計画。アプリは無料で提供され、利用時の課金などもない。
実際に京阪バスに乗車し、おもてなしガイドを体験した。次の停留所のアナウンスが流れると同時に、おもてなしガイドのアプリ画面上に文字情報が表示、インターネットに接続していなくとも利用できるが、接続していれば、急停車のアナウンス時に「危険」のアイコンが表示されたり、到着場所の地図が表示されたりする、よりリッチなコンテンツも用意する。設定から言語を選べば、言語に応じた表示ができる。
また、通常の音声アナウンス以外に肉声によるアナウンスへの対応も研究開発をすすめている。これはマイクから入力されるアナウンスを音声認識し、アナウンスの“台本”と照合することで、文字情報を付与できる仕組み。
例えば「落雷による影響で電車が遅れている」という肉声アナウンスは、各鉄道会社が持つマニュアル(台本)に基づきアナウンスされているため、おもてなしガイド側にその台本を記憶させることで、文字情報として表示する。そのためすべての音声を文字情報にできるわけではなく、利用は限定されている。
ヤマハの瀬戸優樹氏は「観光地における多言語対応は、自動翻訳機や多言語表示などの解決法もあるが、多言語表示を優先するがゆえに日本語の表示が小さくなってしまったり、日本語の次に英語、中国語と読み上げる時間を要したりと、同時性、リアルタイム性に欠ける面があったが、おもてなしガイドではそれらの問題をクリアしている」と優位性を話す。
京都での実証実験は6月1日から2017年3月末までを予定。今回の実証実験を通じて、ユーザーの意見を取り入れ、さらに使いやすいシステムへと発展させていく。
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