米FBIが銃乱射事件の犯人から押収したiPhoneのデータ抽出を行ったことで、犯罪対策としてのスマートフォンの端末解析技術が注目を浴びている。FBIの件では端末解析装置を開発しているイスラエルのCellebriteが関与しているのではないかという話も噂された。しかしCellebriteは本件に関して公式なアナウンスは一切行っておらず、FBIがどのような手法で解析をおこなったかは非公開のままだ。
だが一躍注目を浴びたCellebriteの端末解析ツールは実際に犯罪現場などで遺留品の携帯電話からデータを抜き出す用途などに使われており、世界中の関係機関に販売されている。このCellebriteは日本のサン電子の子会社であり、もともとは端末のデータ転送装置を開発していた。
同社の製品にはB2B向けとして携帯電話キャリアや販売店向けのデータ転送装置「Cellebrite TOUCH」や、警察、軍、法執行機関、諜報機関などへ提供しているデータ解析装置「UFED TOUCH」などがある。今回はサン電子でそのUFEDの実際の操作を見せてもらった。
まずはなぜ端末の解析やデータ抽出を行う技術を持つCellebriteをサン電子は子会社としたのだろうか。サン電子は元々、通信関連やゲームソフトなどを事業の柱の1つにしていた。その後海外への進出を計り、合併や買収などを検討していた時に出会ったのがCellebriteだったとのことだ。
当時Cellebriteは米国で携帯電話販売店向けのデータ転送装置を開発しており、顧客が機種変更した際に前の端末から新しい端末へ住所録などのデータ転送を簡単に行える装置を販売していた。その装置はハードウェアを売るだけではなく、最新機種に対応するファームウェアバージョンアップを有料で提供するというビジネスモデルを展開していた。
しかも同社の製品は携帯電話からPCへデータを抜き出すとき、メーカーからのサポートを必要とせず、独自のマルチドライバを開発していた。Cellebriteはそれだけの高い技術力を持っている会社だったこともあり、買収に至ったという。
サン電子による買収時は社員はわずか40名の小さい会社だったとのこと。その後順調に事業を拡大し、現在では売り上げ10倍、社員数も10倍となっている。ちなみにイスラエルの企業が海外企業に買収されて成長した例は少なく、サン電子によればCellebriteの成功はイスラエル国内でも大きな話題になっているとのことだ。
長期的な計画を立て着々と事業を展開していくという日本の文化と、短期的な目標から新しい技術を次々に開発していくというイスラエル側の文化が融合したことも、Cellebriteの成長の大きな要因だったという。
そのCellebriteの主力製品の1つであるUFEDは、あらゆるスマートフォンや携帯電話から保存されているデータを解析し、外部に抜き出すことが可能な装置だ。携帯電話のデータ抽出は、プライバシーの問題にもつながるため、UFEDの一般販売は一切されておらず、特定の顧客向けにのみ販売されている。
その特定顧客とは、捜査権限を持ち、公務を執行できる行政機関など。前述したように警察や法執行機関などが主な顧客だ。ちなみにFBIのニュース絡みでCellebriteには「故人のスマートフォンのデータを復活してほしい」といった一般消費者からの問い合わせを受けることが急増しているという。しかし一般人向けのサービスや製品販売は行っていない。
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