スマートフォンネイティブが見ている世界

ネット彼氏ができるわけ--共感求め暴走する若者の告白願望 - (page 2)

自分一人で受け止められない症候群

 大学1年生女子A子は、どんなことでもすべてTwitterに書かずにはいられない。1日に200くらいツイートすることもあり、本当に息を吐くように自然にツイートしているのだ。内容は自分の行動や考えたこと、感じたことなどのすべて。Twitterアカウントさえ見ていれば彼女の1日が手に取るように分かる。「誰に見てほしいわけでも反応がほしいわけでもない」と言いながら、書かずにはいられない。

 名前はローマ字で本名を使っており、大学名もプロフィールで明かしていた。しかし、「今日の一限は寝坊でサボり」「この先生とはマジ合わない」などと書いており、とても心配になった。

 ある大学1年生男子B男は、彼女とデートしている時もツイートをしている。「全部フォロワーに見られているみたいだ」「私よりフォロワーの方がB男について詳しいのでは」と、彼女がスマートフォンを置くように言っても我慢できずツイートしている。

 先日も、デートで食べたランチ写真を早速Twitterにあげ、「ランチ美味しそう」とたくさんコメントがきたことを喜んでいる様子を見て、イラっとした彼女がデートの途中で帰ってしまった。それでもB男は「彼女にふられそう\(^_^)/」などとツイートしており、結局本当にふられてしまったそうだ。

 感情がコントロールできず、誰かに話を聞いてほしいことはある。しかし、10代の子たちは普段からどんなこともすべてネットに投げかけることでバランスを取っているようだ。自分だけで受け止めず、親しい人と分かち合うこともせず、不特定多数の“誰か”に投げかける。「自分一人で受け止められない症候群」とでも呼べばいいだろうか。

暴走する告白願望

 告白願望が暴走するともっと大きな問題になることがある。たとえば高校2年生女子C奈は「学校の備品をぱちった(勝手にもらった)」「(苦手な子の)机にゴミを入れた」などの問題ある投稿をしている。投稿すると「(そのようなことをする気持ちが)分かる」「(その子がひどいせいだから)もっとひどいことをするべき」などの自分の行動を肯定する反応があるという。「自分が悪いんじゃないと思えるし、安心できる」とC奈は言う。

 しかし、C奈のように誰かに「それでいい」と言われたり、認められたりしたいがために投稿したことが過激化すると、炎上につながる。C奈の書き込みも炎上する可能性は十分にある。若い頃は強がってわざと偽悪的なことを口にしたい時がある。口で言うだけなら罪もないが、ネットに書くと手痛いしっぺ返しがくる可能性がある点は注意が必要だ。

 愚痴や悩みも、誰かに言うと「うざい」と思われるかもしれない。その点、ネットなら反応したい人だけが反応するので、「誰かに聞いてほしい」時にぴったりだ。しかし、それではいつまでもお互いに本音が言える友人関係は築けない。「ネットの関係は都合がいい時につながればいいし、面倒くさくなったら切ってしまうからいい」と聞いたことがあるが、それで本当の人間関係なのだろうか。

 誰でもネガティブな感情を抱いたり、問題ある行動に出てしまうことはある。しかし、そのようなことは自分だけで抱えておくべきだ。もし自分だけでは抱えきれないのなら、信頼できる身近な人に相談すべきだろう。安易にネット上の他人に「共感」「理解」を求めてその場だけやり過ごしてはいけない。表面だけ味方のふりをして、炎上させようと考えている可能性さえある。

 理解したり受け入れてくれたりする人を見つけることは難しい。しかし、だからこそ、そのような人を見つけることに価値があるのではないだろうか。大人世代は、子どもたちがリアルな人間関係が築けるよう、場を作るなどして見守ってやってほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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