「自動運転の普及に向けて、高精度の地図が必要不可欠になってくる。それをどう作るかが今後の一番のポイント。パイオニアでは『3D-LiDAR(ライダー)』を使って、HEREと協業し、スタンダードなものを作る」――パイオニア代表取締役兼社長執行役員の小谷進氏は、5月12日に発表した中期計画で、"目指す姿”をこう表現した。
パイオニアは、2014年に長く取り組んできたホームAV事業とDJ機器事業の売却を発表。カーエレクトロニクスにリソースを集中する戦略を推進してきた。
2017年3月期の決算からは、今まで「その他」セグメントに振り分けていた地図ビジネスを「カーエレクトロニクス」セグメントに移動。高精度地図ビジネスに本腰を入れる。
「走行空間センサ3D-LiDARと子会社であるインクリメントPが手掛ける地図制作、これに高精度地図を開発している独HEREの技術を掛け合わせることで、データエコシステムの実現に向けた実証実験を開始する。自動運転の実現になくてはならない会社になることを目指している」と小谷氏は話す。
自動運転関連で培った技術は、産業インフラ、IT農業、防災、ロボットなどへの活用も視野に入れる。ビジネスとしては、2018年に先進運転支援システム向けに高精度地図の販売を開始し、2019年には3D-LiDAR、高度化地図データエコシステムの事業化準備を完了する予定。研究開発費として2017~2021年の5年間に100億円を投じる計画だ。
しかし足下の環境は厳しい。同日発表された2016年3月期通期(2015年4月~2016年3月)の連結決算では、売上高が前年同期比10.4%減の4496億円、営業利益は同6.1%減の73億円と前期を下回った。当期純利益は同146億円から7億円へと減少した。
小谷氏は「事業譲渡の影響や市販カーオーディオの減少などにより前期を下回る結果となった。販売費と一般管理費は減少したが、為替の影響や売上総利益の減少があった」と説明する。
なかでもカーエレクトロニクス事業の新興国の状況は深刻だ。「第4四半期において、中近東を中心とした新興国のビジネスが急激に悪化した。また自動車メーカーの操業停止などもあり、時期的にも挽回ができなかった。ただし、AVとナビの一体開発や生産拠点の変更などの効果は計画どおりに出てきている」と現状を話す。
2017年3月期においては、売上高が前年同期比6.6%減の4200億円に減少するが、営業利益は80億円(同73億円)、当期純利益は10億円(同7億円)を見込む。これはカーOEMや光ディスクドライブなどの売上減により、売上総利益は減少するものの、カーエレクトロニクスを中心としたコストダウン効果や、カーOEMの売上減による事業ミックスの効果が出てくるためという。
「今期、来期のOEMビジネスは停滞するが、2017年後半から2018年にかけて売上は回復に転じると見ている。すでに2019年にはスピーカの大型受注が決まっており、国内自動車メーカーからも受注を受けている。2019年以降は確実に売上に貢献してくる」(小谷氏)と強調する。
パイオニアでは3年後の2019年には売上高4500億円、営業利益200億円、5年後の2021年には売上高5100億円、営業利益310億円を目指す。
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