「日本ブロックチェーン協会」が発足--28社が参画、行政も“次の一手”に期待 - (page 2)

ブロックチェーン技術が持つ可能性と課題とは

 会見では、JBAが4月20日に自民党 IT戦略特命委員会 資金決済小委員会に対して実施した、ブロックチェーン技術の活用に関する政策提言の内容が、デロイトトーマツコンサルティング執行役員の萩生泰之氏から紹介された。

デロイトトーマツコンサルティング執行役員の萩生泰之氏
デロイトトーマツコンサルティング執行役員の萩生泰之氏

 萩生氏は、ブロックチェーン技術の機能特性として、承認されたデータをすべての参加者が同時に参照でき、一度合意したデータを変化・改ざんできない「透明性の高さ」、システムの一部が故障しても他のシステムが生存している限り応答でき、障害などが発生してもシステムがダウンしない「信頼性の高さ」、処理分散によるシステムコスト、メンテナンスコストの低減や、契約・決済業務のスピードアップといった「効率性の高さ」という3つの利点を紹介。その上で、「ブロックチェーン技術には、処理速度やセキュリティ面でまだ課題もあり、今後研究を重ねて解消する必要がある」と提言した。

 また、グローバルで見たブロックチェーン技術の動きについて萩生氏は、FinTech分野のスタートアップであるR3CEVと、日本を含む世界各国の金融機関43行が集まり、金融システムの規格策定を目指して研究を進めているコンソーシアムや、ロンドン証券取引所、NASDAQなどの取り組みを紹介。その上で、「日本国内の取り組みは遅れている。各金融機関が個別に取り組んでいるものの、R3CEVのような大きな取り組みとは異なる。また、分散型データベースはより高い目線で広く普及させることにメリットがあるが、日本はまだそこまで至っていない」と課題を指摘した。

ブロックチェーン技術の活用が期待できるさまざまな分野
ブロックチェーン技術の活用が期待できるさまざまな分野

 ブロックチェーン技術の活用シーンについては、「ブロックチェーン技術の高透明性、高信頼性、高効率性を踏まえると、社会インフラへ活用することで最も大きな効果を発揮できるのではないか。金融領域では送金、決済、公共領域ではマイナンバーのID管理、その他の領域では物流やトレーサビリティにおいて可能性がある。ただし、あくまでもこれらは机上のユースケース(活用シーン)にすぎず、今後は実際にプロトタイプを開発し課題を見定めていく必要がある」と説明。

 その技術開発にあたっては、システム開発を行ってきた大規模なSIerとブロックチェーン領域で技術開発をする中小規模のベンチャー企業が、企業規模や技術力の垣根を超えてエコシステムを構築する必要性を提起し、その中でJBAがアクセラレータとして機能していく方針を語った。

技術開発にはエコシステムの構築が必要
技術開発にはエコシステムの構築が必要

行政も“次の一手”に期待

 同日の会見には、衆院議員で自民党 IT戦略特命委員会 資金決済小委員会の福田峰之小委員長、経済産業省 商務情報政策局 情報政策課長である佐野究一郎氏、金融庁 総務企画局 企画官である神田潤一氏が出席。

 佐野氏は「経産省では、IoTやビッグデータに続く“次の一手”として、ブロックチェーン技術の可能性や分散型情報技術に注目し、調査研究を進めている。これまでは取引の信頼性担保のために、第三者認証などさまざまな社会的コストが必要とされてきた。ブロックチェーン技術にはこうした社会的制約を開放する可能性を持っており、そのインパクトは非常に大きいのではないか。ブロックチェーンの拡大によって、今後はポイントや仮想通貨といった“価値”が生み出され流通する世界や、シェアリングエコノミーがさらに効率よくなる世界、改ざんの心配がない情報トレーサビリティが実現する世界などが考えられる。経産省ではさまざまなユースケースを発掘し、ブロックチェーンの活用を推進していくとともに、実証段階にある技術の課題検証や普及のための法的課題の検討など社会実装のための支援してきたい。行政自らもブロックチェーンの採用を積極的に検討していく」とコメント。

自民党 IT戦略特命委員会 資金決済小委員会の福田峰之氏
自民党 IT戦略特命委員会 資金決済小委員会の福田峰之氏

 また福田峰之議員は、「現在はビットコインのような仮想通貨だけでなく、さまざまな分野でブロックチェーン技術が活用できるという状況にある。このブロックチェーン技術で新しいビジネスゾーンを作り出し、新しい時代のプラットフォームを作って振興してほしい。その中で生まれた要望や政策提言などはしっかりとサポートしていきたい」とJBAの活動に期待を寄せた。

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