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タブーと困難に挑んで掴んだ唯一無二の存在感--ソニー「h.ear on」

加納恵 (編集部)2016年05月01日 10時00分
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 iFデザインアワード 2016の金賞を受賞した、キヤノン、ニコン、ソニーの3社4製品のデザイン担当者が語った「デザインのプロセス」を全4回で紹介する。今回はソニーのステレオヘッドホン「h.ear on」。ミニマルで一体感のある造形を作り上げた背景には、ソニー史上初の試みが数多く盛り込まれている。ソニークリエイティブセンターシニアマネジャーの飯嶋義宗氏が語る、チャレンジに満ちたデザインプロセスとは――。


ヘッドホン「h.ear on MDR-100A」

金属、プラスチック、糸、異なる素材を同色に仕上げる壮大な試み

 ソニーでは、スタジオミュージシャンを中心に愛用されている超ロングセラーモデル「MDR-CD900ST」や高機能モデルの「MDR-1R」など、数多くのヘッドホンを開発、販売している。h.ear onが目指したのは、今までのようなメカニカルなヘッドホンではなく、可能な限り造形を圧縮、凝縮し、1つの固まりとしてデザインすること。それによりカラーが目立つような作りしていくことだったという。

 h.ear onは、ビリジアンブルー、シナバーレッド、チャコールブラック、ライムイエロー、ボルドーピンクの5つのカラーバリエーションを展開。このカラーリングは、インナーイヤー型ヘッドホンの「h.ear in」、デジタルオーディオプレーヤーの「Walkman」にも使用されている。


ソニークリエイティブセンターシニアマネージャーの飯嶋義宗氏

 カラーリングは徹底しており、イヤーパッドやヘッドバンド部はもちろん、イヤパッドの裏側のメッシュ部分、裁縫の糸、ヒンジなどのパーツまで、すべて同様のカラーに仕上げた「シングルカラーフィニッシュ」を採用する。

 「h.ear onでは、ヒンジを内側に配置し、ネジが1つも見えない点にもこだわった。通常見えない部分であっても、ちらっと見えた時を考え、きちんとカラーリングしている」と飯島氏は話す。一言で同じカラーリングといっても、ヘッドホンのパーツは金属からプラスチック、布まで素材が多岐に渡る。それらを同じカラーに仕上げるには、色指定をするだけではだめで、パーツ1つ1つの色味を微調整する必要があった。「試作では1000種類以上を調色した」という通り、各パーツ×5色分のカラーを確認。「身に着けるファッションアイテムとしても考慮して色のトーンを整えた」と言う。


h.ear onに採用した5色は、パッケージやアクセサリなどにも展開している

ソニーロゴに"色をつける”ことで完成するシングルカラーフィニッシュ

 カラーリングの徹底ぶりは、パーツだけにとどまらない。h.ear onで最もチャレンジングだったのは、ソニーロゴにもカラーを採用している点だ。「ソニー製品についているロゴの色は今までモノトーンのみ。これは社内ルールによって決められているもので、色がついたものはなかった。しかしh.ear onはシングルカラーフィニッシュがデザインのコンセプト。ソニーロゴもカラーで仕上げなければ、コンセプト自体が揺らいでしまう」とシングルカラーフィニッシュにこだわった。

 前例がないこともあり、難航したが最終的には「社長に直訴して、承認してもらった。大変メモリアルなモデルになった」と飯島氏は当時を振り返る。

 h.ear onでもう1つ大きなハードルとなったのが、カラーそのものだ。5色はすべてはレッドとシナバー(朱色)、ライムとイエロー、ビリジアン(緑)とブルーなどの中間色を採用する。「新しいカラーリングのため、社内では『青だか緑だかわからない』と反対の声が出たのも事実。社内プレゼンでは、デザイナー5人が各カラーに合わせた服を着てアピールした」と、社内の様子も明かした。


h.ear onのカラーはレッドとシナバー、ライムとイエロー、ビリジアンとブルーなどの中間色を採用する

 数々の困難を打ち破りながら、製品化にたどり着いたh.ear on。「最後は楽しみながら取り組んだ」と話す通り、商品デザインだけでなく、営業担当者が営業先に商品を持っていく、スーツケース型の販売促進セットをデザインするなど、思わぬ副産物も生まれたという。

 「h.ear onはデザイナーとエンジニアのこだわりを盛り込んでいったのが受賞理由になったと考えている。今後も開発者の情熱が伝わるようなデザインをしていきたい」と飯島氏は締めた。


右上がスーツケース型の販売促進セット、右下が社内プレゼンの様子で、デザイナーが各カラーに合わせた服を着てカラーをアピールした

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