動画サービスの充実や映像配信サービスの普及など、映像コンテンツに触れる機会が高まっている一方、連続ドラマの低視聴率が話題になるなど「テレビ離れ」の意識は依然として根強い。いつでも、どこでも好きなコンテンツが楽しめる時代に、アニメ専門チャンネルの「アニマックス」は、ウェブ連動のサービスを開始し、リアルタイムの最高視聴率を前週の3倍に引き上げた。タイムシフト、プレイスシフトが当たり前になる中、リアルタイムでの視聴にこだわった理由とは何か。アニマックスブロードキャスト・ジャパン代表取締役社長の滝山雅夫氏に聞いた。
アニマックスは、2016年に創業18年を迎える老舗のアニメ専門チャンネルだ。「ドラゴンボール」「機動戦士ガンダム」などの超ヒット作からOVAまで、24時間365日、アニメ作品とその関連情報を提供している。
「テレビは家族で見るスタイルが一般的だったが、今は1人で見るケースが圧倒的に多くなっている。しかし1人でも見ていると、誰かとこの時間を共有したい、コミュニケーションをとりたいという欲求が出てくる。そうした思いに応えたいと始めたのが、放送とウェブを連動した新サービス『Watchwith』」と滝山氏は導入のきっかけを話す。
Watchwithは、米ロサンゼルスに拠点を置くWatchwithが手がけるサービス。PCやタブレット、スマートフォンなどに番組関連情報や特設コンテンツを表示でき、テレビ放送と連動することで、放送内容に合わせた情報をセカンドスクリーンに提供できることが特徴だ。
アニマックスでは2月にアニメ「勝負師伝説 哲也」の一挙放送を実施。あわせてWatchwithによるセカンドスクリーンへの情報提供サービスを開始した。「元々コアなファンが多い作品のため、受け入れられやすいとは思っていたが、深夜放送にもかかわらず、かなりの人に楽しんでもらえた」と滝山氏は自信を見せる。
午前0〜5時にかけて行われた一挙放送にあわせ、Watchwithでは作品トリビアやセリフの解説、作品に関連するクイズなどを実施。約4000人のユーザーが参加したという。サービスはウェブブラウザ上で提供され、アプリなどのダウンロードは不要。セカンドスクリーン用のコンテンツはアニマックスのスタッフが中心になって作り、番組の裏話などやちょっとした小ネタなど「ほかでは知ることができない情報」が提供された。
「テレビの良いところは1つ番組を多くの人に一度に提供できる同時性と、今ここでしか見られない希少性。VODサービスなどと差別化を図るには、この部分を打ち出していく必要がある。Watchwithは基本的に録画では動作しないので、テレビの長所をいかしたコンテンツを提供できた」と滝山氏は説明する。
一挙放送で提供した理由については「アニメ番組は約22分と、ストーリー以外の情報を盛り込むには1話の分数が短い。ただ短い中でも提供できる情報はあると思うので、今後の課題にしていく」と話した。
「私たちが放送を開始した1998年当時は、有料多チャンネルは娯楽の大きな一部を占めていた。しかし、現代の若い世代の人たちはゲーム、SNS、動画など、やりたいことが分散している。そうした人たちにアニマックスを届けるには、ほかとは違うことをやらなければならない。アニマックスでは、イベントや『アニマックスCAFE』など、放送とは違ったサービスに積極的に取り組んでいる。ほかの人がやっていないことを先に取り組んでいく、それがアニマックスのポリシー」と積極的な姿勢を見せる。
ただ滝山氏は「通信にはお金をかけ、コンテンツまでは回らないという人が多い。動画サービスなどの充実もあり『コンテンツにお金を払う』感覚が薄れつつあることは事実」と現状の不安を口にする。「そうならないためにも、ユーザーが満足してくれるサービスを次から次へと提供する必要がある」と打開策に取り組んでいるとした。テレビ離れに歯止めをかける1つの策としてアニマックスが取り組むWatchwithは、3月26日の午前0〜6時に一挙放送する「学戦都市アスタリスク」でも採用した。
今後のテレビ局のあり方について問うと滝山氏は「今の時代、子どもが最初に触れるスクリーンはテレビではなくタブレットやスマートフォン。それだけ生活に密着したものにどういうサービスができるかは、常に考えていかねければならない。通信のサービスは誰でも取り組める敷居の低さが魅力。それだけに競争が激しく、クオリティは求められる。アニマックスはそうした中でも専門チャンネルとして18年間培ってきたノウハウや人脈をいかして、展開していきたい」と明確なビジョンを示した。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」