アドビシステムズは3月14日からプレビュー版の公開が始まった新しいソフトウェア「Adobe Experience Design CC(Adobe XD)」に関する説明会を日本でも開催した。アドビのクラウドサービスのユーザーであれば、誰でも無償で利用できる。
Adobe XDは、UXデザインとプロトタイピングに特化した新しいタイプの製品となる。2015年に開催されたAdobe MAXで「Project Comet」の名称でデモが公開されていた。
マーケティング本部の轟啓介氏は、「現段階でメニューは日本語化されていない。対応しているOSもOS X Yosemite以降のみで、機能も基本的なものに限られている。あえて早い段階でプレビュー版を公開し、ユーザーの皆さんからのフィードバックを得たいと考えている。今後は毎月、機能をアップデートし、年内の製品発売に向けて開発を進めていく予定となっている。今後、開発陣が来日し、日本固有のニーズを聞く機会を設ける予定もあり、日本の皆さんもプレビュー版を利用してほしい」とアピールしている。
Adobe XDは、一つのソフトウェア上でユーザーエクスペリエンス(UX)のデザイン、プロトタイプ作成や変更といった作業が完結できる。
「これまでアドビはPhotoshopでフォトデザイン、InDesignで出版社向けデザインとさまざまな業務でのデザイン用ソフトを提供してきた。ただし、ウェブやモバイルのUXデザインについては既存製品で部分的に対応してはいたものの、1本でトータルに作業できるものは提供してこなかった」(轟氏)
これは他社も同様で、多くのUXデザイン作業には複数のソフトを使って、作業が行われていた。そのためUXデザインを担当するデザイナーから「ウェブサイト、モバイルアプリのUXデザインに特化したツールが欲しい」という声が上がり、製品開発することとなった。
「(ウェブサイトやモバイルアプリの)プレビュー作業を行う際、複数のツールを使っての作業ではフィードバックが面倒になり、クリエイティビティを犠牲にしてフィードバック作業を優先させてしまう、負のスパイラルを生むワークフローになっていたきらいがある。また、Adobe製品は専用製品ではなく、さまざまな作業ができる“なんでも屋さん”になっている。アプリが複雑化してUX開発作業も難しくなっている中、専用ツールで軽快に作業ができることを目指した」(轟氏)とUXデザインでの生産性を上げることが新製品提供の狙いとなっている。
今回のプレビュー版公開までは、UXデザイナーのコミュニティーとクローズで意見を募ってきた。そこでの意見を反映し、さらに多くの利用者の意見を得るために誰でも利用できるプレビュー版公開を決定した。
「年末を目処にWindows 10版、さらにAndroidやiOSも予定している。まずは対応OSをOS Xに絞り込むことで早期に開発を進めることを選択して、OS X版を完成させる。とにかく、少しでも早く製品を提供したいと考えた」
3月14日にプレビュー版が公開された直後に、轟氏自身が機能を紹介するブログを公開し、Twitterで告知した。「その段階で予想を上回る反響があり、この分野に関する注目が高いことを実感した」という。
現段階では、(1)PC向けのウェブサイトやアプリのユーザーインターフェース(UI)を制作する“デザインモード”、(2)UI操作による画面遷移や画面遷移エフェクトなどを設定し、プレビューができる“プロトタイプモード”――という2つのモードがある。
ソフトを起ち上げると、デザインモードからスタートし、どの画面サイズからデザインするのかの選択から、矩形ツールや円形ツールなどをで必要なオブジェクトを作成できる。利用する画像は、PhotoshopなどAdobe Creative Cloudからの連携も容易と説明している。
こうしたデザインモードの作業としてどんな作業を行えばいいのかがわからない場合は、サンプルファイルを選択すると、基本的な作業がチュートリアル的に紹介される。
プロトタイプモードでは、ユーザーが体験する画面遷移をデザインしていく。プロトタイプモードに移ると、デザインモードで配置した全オブジェクトに対して、画面遷移トリガーを設定できる。画面遷移は録画して確認することもできる。
「最初のプレビューなので、メニューは日本語化されておらず、機能が限定されているが、今後、継続的に機能拡充を進め、日本語メニューの提供も行っていく。長期にわたってプレビューを利用して貰いたい」と長期的にプレビュー版の利用を呼びかける。
正式な製品提供のスケジュールは、「年内にバージョン1を提供したいと考えているが、プレビュー版に寄せられる意見が予想以上に多かった場合には、機能を拡充することを優先することになるだろう」と現時点での発売見込みはあくまでも見込みだという。
日本での製品の呼称については、「Experienceというアルファベットは入力が難しい。日本ではXDが通称になるのではないか」と見ている。
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